貸会議室事業の閉鎖と振り返り

当方、2018年3月から渋谷の不動産を転貸して貸会議室事業を行っています。

2年間で営業と環境改善が功を奏し軌道に乗りかけたところ、新型コロナウイルス感染症関連で、急激に客が落ち込んだので利益が出ないと判断、8月29日に撤退を決断しました。

大学院時代に、友人と半額出資しあって始めたビジネスなので思い入れはありますが、思い入れだけでお金にはできません。昨晩、撤退を一緒に決めました。

今日は、そんな会議室ビジネスの反省点を整理してみたいと思います。
自分も次に活かしたいと思っています。

貸し会議室の仕組み

私がやっていた貸会議室の仕組み。
単純なもので、借り入れた不動産を転貸、小分けに貸し出す仕組み(当然不動産所有者が空き部屋を貸し出すスタイルも)です。

●流れ
①会議室として利用できる不動産を借りる
②借りた不動産を予約サイトに登録
③お客さんが予約サイトを通じて予約、予約サイトから月単位でお金が入る

自分の持っているスペースをインターネットの複数の予約サイト(スペイシー・スペースマーケット等)に掲載して、時間単位で借りてもらうことになります。

予約管理・決済・領収書の発行は、予約サイト。
部屋の管理は自分達
で行う仕組みです。

転貸契約が可能な不動産ならば、「少ない資本」で行うことができ、「単価も高め」に設定できるため、当初は損益分岐点も低めでした。

撤退理由

撤退理由、言わずもがな「利益が出なくなったこと」です。

もう少し細かく、

原因としては、コロナウイルス感染症の影響等で、

「会議室需要が減ったこと」
「今後も(当面)回復の見込みがないこと」
がはっきりしたためです。

事業をして2年でようやく軌道に乗って、2月までは黒字を出しました。一方で、2020年3月頃から新型コロナウイルス感染症の影響で予約をする方が大幅に減少。4,5月は休業し、東京都の休業支援金の対象となっています。

6月以降再開、コロナ後も若干の赤字で済んでいましたが、

 ① 渋谷の人の流れが減少
 ② ZOOM会議などの手軽さ、便利さによるユーザの移動
 ③ ①、②を理由とした競合スペースの予約も軒並み減少

これらにより、「業界のパイのサイズがかなり小さくなった」と分析しています。

貸主の大家さんとも家賃交渉しましたが、家賃変更は不可能とのこと。新型コロナウイルス感染症の状況が回復し、客足が戻るのをどの程度待つか不明なことと、そこまで赤字を垂れ流すのは得策でない。

現時点が撤退に適した時期と判断したため、事業を閉じることにしました。

反省点等整理

今後の事業のために残しておきます。
細かなところだともっと反省点はありますが、主だったもののみ。

「良いものだから売れる」わけではない

単に良いスペースだとしても知ってもらわないとダメなので、スペースを売り込むために営業しなければなりません。もう少し多数の営業手段をとっても良かったと思います。

同業者が増え易くコモディティ化するビジネスは避ける

お客さんの増加と同時に、ライバルも増えてきます。
2018年当初は、そんなに多くなかった会議室、利益が出ると見るや競合が増えてきます。

企業投資と同じく、

事業の算入がしやすい = 誰でもできる 
 → 価値の差をつけにくい 
 → 価格競争になりやすい

先行者に若干有利とはいえ、ビジネス的に他者に競争力が、

 ・アクセスの良さ
 ・(用途に合う)部屋の広さ
 ・清潔さ
 ・プロジェクターなどの付属品
 ・価格

に集約されてくるビジネスです。

多少オシャレな部屋などで独自化にしたものもありましたが、必ずしもそちらにお客さんが流れるわけではなく、基本的にはスペースがあれば困らないお客さんが多いようでした(うちは綺麗なだけで壁紙などオシャレな装丁はありません)。

競合が増えると、低品質でもいいから安く貸すような部屋が出てきて、そちらにお客さんが流れます。対抗するために価格を下げるような、事業価値のデフレスパイラルを生じ、事業主にとって利益を減らす要因になりました。

単価が安いお客さんでも個別対応コストがかかる

単価が安くても、相手が求めるサービスの質は同等です。
むしろ、安い単価で利用する人ほど、高いサービスを求める傾向が強いように思いました。

 ・案内を読めばわかることを電話で相談してくる人
 ・正しい手順を踏まないで付属品を壊す人
 ・自己のミスをあてつけのようにクレームをする人

これら、人への対応コストを甘く見てました。

不特定多数のサービスの提供は、人への対応コストが大きくかかることを考慮した値付けをする必要があります。サポートにかけたコストを考慮した利益は、時給換算するとほぼゼロになるように思います。

サービスを厚くするために、単価の高い業種が望ましいといえます。

少資本だったので撤退が楽だった

良い判断として、少資本だったこと。

撤退の最終判断に3日間程度。即日契約終了ではないため、数ヶ月事業を閉じる期間が必要になりますが、早めの決断を下せました。

これがもし、巨額の固定資産を購入していたり、棚卸資産を抱えたりするビジネスだったらそうもいかなかったと思います。資本が少ないと、事業方針の変更がラクだということがわかります。

まとめ

基本的に反省点にあるとおり、

・「営業が弱い」ので利益が少なかったこと
・普及し「単価を上げにくい」ビジネスになったこと
・少額資本のビジネスなので損失を少なく済んだこと

などがあげられます。

最初に書いたとおり、大学院の友人と始めたビジネスだったので思い入れはかなり深かった。

一方で事業の失敗を体で感じたこと、そして、共同出資してくれた友人と「今度はもっと儲かるビジネスやりたいね」、と終われそうだったことは幸いでした。

Twitterには書きましたが、事業を手放す痛みというのは、事業をした人じゃないとわからないと思います。税理士になったら、こういう不幸な事業主を減らしていきたいものです。

それにしても悔しい。次につなげてみせる。

なお、不動産所得は、会議室ビジネス以外に小規模のものがあるので細々と残ります。そちらは手間がかからないので、消えることは無いと思いますが気が向いたら紹介します。

コメント

  1. […] 貸会議室事業の閉鎖と振り返り当方、2018年3月から渋谷の不動産を転貸して貸会議室事業を行っています。2年間で営業と環境改善が功を奏し軌道に乗りかけたところ、新型コロナウイ […]

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