前回の記事に大学院のときの受験科目で「国税徴収法」をオススメしました。
今回は、勉強法も書いておきます。
大学院の税法免除では、文章(論文)を書きます。大学院免除とあわせて、記事として読んでもらえれば幸いです。
目次
基本的な勉強法
結論から言うと、国税徴収法の勉強はコツはありません。
地道な「暗記」と「理解」を要します。
コツはないのか・・・と、ツッコミが来そうですが、その代わりに他法以上に「努力量を裏切らない科目」だと思っています。
結局、合格までたどり着いたところ、一定量の「暗記」と「理解」をする勉強が必要になるのです。
まずは「暗記」をします。
手を抜くとほぼ間違いなく書けません。
次に「理解」。
最近の問題傾向では「理解」が必要となる設問も多いです。
「滞納者の事例からどういう滞納処分等をすべきか、緩和措置をすべきか」というような、組み立て方と法適用を求める問題が必ず出ています。
暗記が先か、理解が先か
次に、暗記が先か、理解が先かは難しいところですが、暗記が楽になるので、授業をベースとした理解を先にすることを勧めます。
序盤は、暗記3:理解7、徐々に暗記重視になり、
直前期に入ると暗記6:理解4程度になり、
終盤は、暗記9:理解1くらいになってくるかと思います。
終盤は理解が必要ないのではなく、新たに理解することが無いためです。特殊な裁判例や基本通達ヘの対応くらいです。
どの科目でもそうですが、初期は理解重視のため、講義内容を次の週に持ち越さないこと。
週1授業ですので、一字一句暗記できればベストですが、少なくとも内容を理解する(論点の柱上げと何が書いてあるか)ことが初期では一番大切です。
暗記はどこまですべきか
予備校によって、重要度をランク分けしていますが、練度の差こそあれ、「全ランク暗記し終えるのが望ましい」です。
例えば第67回(平成29年)に、前回(第66回)に出ていた「同族会社の第二次納税義務」(O原さんだと第67回は、前回出題としてランクC)が、再出題されたのも記憶に新しいかと思います。
とはいえ、信託関連の分野など、あまりにも特殊すぎる論点で暗記不要な部分もないことはないですが、それ自体も大した分量は無いので、覚えづらくても完璧にすべきでしょう。
あと、ほぼ全部覚えられていると、「出たら、暗記した内容を柱を上げて書けばいい」と思えるので、精神衛生上良いです。
暗記できていればそれだけ自信になるわけですね。
暗記方法
暗記方法は、人それぞれ異なります。
恐らく他のブログにも税理士試験の暗記方法については、たくさんの方法を提案している方がいるので、私がやった方法のみ書きましょう。
暗記方法は、人により向き不向きがあるので、色々調べて自分がやりやすいものを早いうちに決めておきましょう。
とはいえ、長々とノウハウにこだわって始められないくらいなら、分量の少ないテーマで、一つずつ試してみると良いかと思います。
どの方法でも、多かれ少なかれ暗記できますので、ノウハウ探しを長引かせてやらない時間の方が勿体無いです。
私の場合は、以下の3つをやっていました。
1 理解するために図や表を書く
2 読み上げる(録音)
3 書く・打ち込む
理解するために図や表を書く
同系列のテーマで、要件や必要書類、効果などの共通点、相違点を表にします。
教科書にも似たような表があると思います。アレを自分で作る感じです。
授業後に1回書いてみて、どれだけ理解できているかを確認します。次に、内容が分からなくなった時に、また作成すればいいかと思います。
いわゆる「理解」出来ているかを訓練しています。
一字一句書かなくて良く、暗記の精度がいまいちでも授業を理解していれば書けるはずです。
このメリットは、暗記効率が上がること(共通箇所を把握できるので覚える手間が減る)と、最近の試験傾向としては、違いを問う形式が最近多いので、応用理論対策につながります。
後で読み返す資料の作成を目的としているわけではなく、理解するためにやっていることに留意してください。
例えば、保全関係なら「保全差押と繰上保全差押の違い(及び共通点)」について、保全差押は国徴法、繰上保全差押は通則法に載っており、要件、差押解除の要件の期間が異なります、などなど・・・。
「納税の猶予、換価の猶予(職権)、換価の猶予(申請)」などもそうです。
不動産を準用した差押えとして、自動車、建設機械又は小型船舶と、船舶又は航空機の違い(共通点)についてなど、実際に図にしたり、表にしたりすることにより、処分の違いをつかんでいくとよいと思います。
読み上げる(録音)
これは、古代から伝わる暗記法(笑)ですので、説明不要かと思います。「読み上げること」で重要なのは、目で追うだけではなく、必ずアウトプットをすることです。
アウトプットは、どんなに暗記がうまくいってない時期でも必ずやるべきです。
どうせ最初はみんな書けません。(←完璧主義に陥るのも税理士試験の敗因になります。)
試験日に完成していれば問題ありません。
絶対に読む(眼で追う)だけではダメです。
目で追うだけだと、苦手部分を無意識に読み飛ばしています。
口で発すると、いやでも頭を通す → 思い出せない
となって、忘れている部分を自覚をすることができます。
やり方は単純で、一定の長さまで読みこんで、本を閉じて声を出すだけ。
工夫するところがあるとするなら、「可能なら録音して、通勤時に冊子を開きながら聴く」くらいでしょうか。
何度かやっていくと、同じところで間違えていることに気付くはずです。
間違える場所がわかると、そこに気をつけていくと比較的ミスが減ってきます。
この暗記法の一番のデメリットは、外でやって聞こえると恥ずかしい、かつ、気まずいこと(笑)
どこかのブログに書いてありましたが、マスクをしながら暗記した人もいます。
口の動きも見えず、音もあまりしないため、電車などでも出来るようです。(私はやったことなのでなんともですが。)
書く・打ち込む
こちらのアウトプットも重要です。
とにかく、書く(ボールペン、鉛筆)、打ちこむこと(PCなど)です。
手で書くのは一番暗記の効果があります。
しかしながら、文章量は少なく、効率はあまりよくありません。
そこでお勧めは「タイピング」です。
タイピングは、声を出すほどではないが手書きと比べると5~8倍くらい早くアウトプットできます。
「単語登録」で、単語を大分省略することができるので、
それも併せて利用するといいと思います。
例えば、
「ぜ」→「税務署長」、
「た」→「滞納処分を執行してもなお」、
「ち」→「徴収すべき税額に不足すると認められる」
「さ」→「差押の登記を関係機関に嘱託しなければ」
「じ」→「自動車、建設機械又は小型船舶」
等が登録されていました。
とにかく6月以降は打ちこみました。
打ち込み用に、外でも使えるオススメのツールを紹介しておきます。
キングジム デジタルメモ ポメラ DM100(amazonヘのリンクです。)
私はDM100を持っていますが、既に後継(?)のDM200も出ています。
ただ、DM200は重量があるのと、電池式(DM100はエネループと相性がいい)ではないので、好き嫌いがあるかと思います。
DM100とDM200は、他のポメラと違い、起動が早い。
多機種にないタイピングしやすさもあります。(キーボードそのものは好みが分かれますが・・・)
ただ、多機種は軽いので、使い分けるといいと思います。
私は、仕事帰りに喫茶店に寄り1時間、家で1時間、範囲を決めて打ち続けました。
打ってる時は、目立たない場所なら、書きながら声でもアウトプットしてもいいかと思います。
(なお、喫茶店では目立つのでやめた方がいいかと。)
とにかく、数をこなすことが大切です。
手書きは終盤戦に模試などでこなせばよいかと思います。
1月から始めて間に合うか
これも時々聞かれました。
1月からやっても受かること保証するという意味ではないですが、範囲的には、
1~4月の内容で7割
直前期5~7月で実践向け3割
といったところなので、1月からでも十分間に合います。
では、さらに短期間、4月からならばどうか。
実際に4月からでも合格している友人がいます。
ただ、4月開始の人の講義内容は、上述の1~4月期にあたる部分+αを、4~7月にやります。したがって、後者の3割部分(多少予備校で解説するので2割くらい?)を、自分の理論暗記と理解で戦うことになります。
9月と1月ならそこまで大きな差はありません。
(もちろん上級答練などで、経験値の差は出てきます。)
4月は、授業時間外の暗記をかなりこなす必要が出てくることでしょう。
(でも、仕事以外の余暇を全て受験に費やせば、十分に受かると思います。)
とはいえ、しっかりと時間をかけて暗記をした人が有利な科目ではあります。
オススメ科目の話をした際にも書きましたが、
国税徴収法は「努力を裏切らない科目」です。
上述、4月発の短期合格者も出ることはありますが、
暗記をこなせた長期学習者が、逆に番狂わせで不合格になることは少ない科目です。
予備校はどこにすべきか
これについては、東亜の友人の何人かにも聞かれましたが、結論としては、「予備校は、自分が気に入った方でいい」と思います。
他校や独学用のツールはともかく、大手予備校の2校で差はないと思います。
どちらの予備校も、講義の範囲をしっかり暗記・理解していれば、合格レベルになるので、そこまで心配はないかと思います。
なお、あまり予備校名を挙げるべきではないかと思いますが、
予備校ごとの特徴があるので、批判なしで私的見解を書いておきます。【2017年受験時現在】
TACさんは、法文に厳密に書いていて、暗記量がやや多い。
大原さんは、試験対策として理論をまとめていて、暗記量がやや少ない(法文の省略がある)。
しかし、受験上は差がつく程のものではありません。
法文どおりじゃないと不安ならTAC、
分量を少しでも減らしたいなら大原、
気にするならこのくらいの差はあるかもしれません。
まぁ、気休め程度です。
わたしは、本腰を入れてから2度目を受けることになったとき、どちらの問題も対応できるよう、(特に模試で)応用力を鍛えるために別の予備校にしました。
先ほどの4月からの勉強で国税徴収法を合格した東亜大学の友人は、2つの予備校を掛け持ちしていました。
(しかも、会計科目無し、前年に国徴のみ合格して大学院入学した20代の若手です。)
当人としては、両方の問題を解きたかったとのこと。
予備校や経験者の話を聞く限りだと、各予備校の問題を見て税理士試験の問題を作成しているという説もあるため、戦略としてはありかもしれません。
他の科目と2科目受験する人はさすがに厳しいかと思われます。
とはいえ、模試くらいは、しっかり受けた方がいいと思います。(少なくとも解いて解説を読むこと。)
大学院在学中の受験
前の記事でも書きましたが、無理ではないけれども、できる限り大学院1年生のうちに終わらせるべきです。
東亜大学大学院の1年生は、比較的時間に余裕がありますが、1年生の年明けころから論文作成が始まります。他校でも1年から作っていたとしても本腰を入れるのは同時期ではないでしょうか。
そして、2年生になると論文作成と資料集めに時間がとられるため、急激に時間のやりくりはシビアな環境になります。
それを突っぱねて試験を専念する人もいますが、今度は論文作成が滞り、留年、ひいては退学になりかねないので注意を要します。
とはいえ、自分も2年生時に通過しました。
運よく通過したものの、大学院1年時にある程度積み上げていたので、その貯金でクリアできたと思っています。
余談ですが、大学院も、税理士試験も、
「なんだかんだ言っても、泥臭く地道にこなした人が結局勝つ」ものだと思っています。
過去の自分の場合、税理士試験では効率を求めたため、3年間税法合格科目なし、という結果に返ってきたと思っています。
「税理士試験を終わらせるため、税法1科目を意地でも合格しよう」と覚悟を決めクリアをした今、思うのは、「今までの科目で、ここまで取り組んだものはなかったかも」ということ。
結局、口ではともかく、内心「ミニ税法だから」と甘く見て取り組んで不合格になっていのだと思います。
他の税法でもこれくらい向き合えていたら、別の結果があったかもしれません。
(もちろん、それでやっと土俵に立てるレベル。
官報合格、特に法人、所得合格者は苦労したと思います。)
最後に、
ともあれ、実力でも運でもいいです。
税法を1科目取ることです。
そうすれば、日本一資格取得まで長い年数がかかる試験といわれる税理士試験離脱へ道は開けます。
普通の試験だと諦めるのですが、科目合格制の税理士試験は泥沼化することが多いです。
わたしは、官報合格を割り切って大学院に行ったので受験自体は6年(H24~H29)で逃げ切りました。
3科目合格者は、大学院でしっかりクリアできれば、
税理士試験を終えることができます。
諦めず、Let’s TRY!!
※2020.5.9 レイアウト等を修正
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