1月効果(January Effect)のおさらい

外国株(ベトナム株・米国株)

バイデン当選のラリーでクリーンエネルギー銘柄が好調。その後リスクオンと判断したからか、個人、機関ともに市場に買いが入ったようで、急激な株高となっています。

今日は、「1月効果」について。
時期は終わりましたが、来年に役立ちそうなので備忘録として残します。

1月効果は、12月に偏る売りを利用した投資方法です。
初心者でも銘柄がわかれば十分狙うことができる投資(投機?)方法なので、試してみると良いと思います。

1月効果とは

1月効果は「年末に発生する節税のための売りとその買戻しによる株価の動きを利用した投資法」です。仕組みは難しくないので、再現性もあると思います。

概要を説明していきましょう。

節税(Tax Loss Selling)による売り(と買戻し)

年末になぜ売りが起こるか。

それは「所得税対策」です。

これは日本でも所得税の考え方が同じなので、イメージがわきやすいと思います。
米国の個人所得税は、1~12月の所得に応じて課されます。

次に、株式などの譲渡に関する所得(日本なら「(株式等に係る)譲渡所得」)は、「株式の売却」により実現します。また、損失がでると株式の利益と相殺でき、税額を軽減します。

つまり、「利益が出てる人が、節税のために、損失を相殺させるための売り」が生じます。

また、所得税の課税計算の期間が12月までとなるので、「12月に損失が出ている銘柄を売る」必要があるため、12月末までに売られる(株価が下がり買い時)わけです。Tax Loss Sellingについては次の通り。

例 100万円の実現益と、40万円の含み損がある場合(日本の所得税で計算)

イ 12月に含み損のある銘柄を売らなかった場合

・(株式分の)課税所得 100万円
・税率 20%(復興税割愛) 
・税額 100万円 × 20% = 20万円

ロ 売った場合

・(株式分の)課税所得 100万円 - 40万円 = 60万円
・税率 20%(復興税割愛) 
・税額 60万円 × 20% = 12万円

イ ー ロ = 8万円

デッドキャットバウンス(Dead Cat Bounce)

「死んだ猫も、落とせば1回は跳ねる」

ウォール街の格言です。

大量に売られても、ある程度反発して買い戻される。
日本の格言なら「半値戻し」などが近いと思います。

上記のような銘柄にも、買戻しを生じます。そのタイミングを見越して、売り込まれた銘柄を持っておくことで比較的安全に利益を出すことができます。

Wash Sale Rule

1月効果を知るうえで重要なこと。「Wash Sale Rule」というものがあります。

「損失を出すために株式を売却し、すぐ買い戻す(買ってから売るのを含む)」取引にペナルティを準備しています。
具体的には、「売却の前後30日に同じ銘柄を購入した場合の譲渡損失を計上できない」仕組みです。

日本には特にそういうルールはないようなので、気にしないで問題なさそうですが、「1月効果」に関しては重要な意味を持ちます。

例えば、「12月15日に売却」して損失を計上、「12月16日に買い戻す」という行為をするとその損失は、米国の個人所得税上認められないことになるようです。
即買い戻されないことも「1月効果の下落(要は仕込み時期)」を生じさせているようですね。

具体的な話

1月効果が発生しやすい年

1で書いた通り1月効果は、

・利益が出ている
・損失で相殺

というギミックが成り立つ年に生じます。
そのため、ひたすら下げた年などには(相殺すべき利益がないため)生じづらいようです。

2020年は、前半の大幅な下げの後、後半株価が上げ調子で騰落が激しい年でした。
利益は十分に乗っているので、「損失で相殺」したがる方は少なくなかったと言えます。

銘柄

どういう銘柄が効果的か。

1月効果は、下がったものの買戻しに対するもののため一時的なものです。
また、古くからある銘柄(損が出ていない長期保有者がいる)、大型銘柄(株価の変動が少ない)などは、効果が少なめです。

ポイントは

・小型銘柄
・特にIPOなどで下がり続けた銘柄

などが損出しのターゲットになります。
投資家心理的に、「年末までに(一旦)売ってしまおう」と思える銘柄を考えるとイメージしやすいです。

1月効果に適する時期

上述しましたが、1月効果に適した時期は12月です。
統計的には、12月15日に買い、12月31日に売るのが一番効果的のようです。

税金上の問題のみで捉えるなら、「年末に売りが集まり、年始に買い戻すように思いますが実際は少し早めに動いている」ようです。

「Stock Trader’s Almanac 2021」P110で、
過去33年(1987年12月~2020年2月)の「ラッセル1000」、「ラッセル2000」の1月効果を検証した結果によると、

 12月15日に購入した場合は12月31日に売却した場合が一番効果が高く、
  ラッセル1000 平均+1.6%(年率換算 +43.9%)
  ラッセル2000 平均+2.9%(年率換算 +92.5%)

 12月31日に購入した場合は2月15日に売却した場合が一番効果が高く、
  ラッセル1000 平均+1.8%(年率換算 +15.1%)
  ラッセル2000 平均+2.2%(年率換算 +18.7%)

という結果が出ています。

上述の通り、1月効果は一時期の売買の偏りによるものなので長期的には続きません。
12月末までに売るのが一番年利換算で効果があるようですが、現実的なところで税金対策も含めて年始に売る(数日後に受渡になるので年末の売買)のが無難と思われます。

また、理想のタイミングではないですが、「12月15日に買い12月31日に売り」、そのあと「12月末に入ったあと2月15日売る」という2回目を狙うことができるかもしれません。

1月効果の注意事項

将来を期待されない銘柄などについては、効果のないものもあります。
「売りのみで買戻しされない」ことも想定されるわけです。

投機的要素が強いので1月効果狙いで買い過ぎないようにした方がよさそうです。
ただ、一旦大幅に下がっている銘柄を狙うので下値は少なめで比較的安全な投資といえます。

実例(2020年ROOT)

Twitterでじっちゃまこと、広瀬隆雄氏(@hirosetakao)が1月効果の銘柄として推奨した1銘柄「ROOT」について追ってみましょう。

図を見てもらえればわかる通り、10月28日に上場したROOT。
銘柄や事業の詳細は、今回の投資法と方向性が違うので割愛します。
(面白そうな銘柄なんですけどね。)

 10月28日上場。
 そこから株価は振るわず、12月15日までに40%程度の下げが生じています。

 投資家心理としては、持ち越して含み損を抱えていても仕方ないので、「一旦売って税金と相殺しよう」と考えます。それが緩やかに12月の下げになり、12月15日に至ります。

 そして買戻し、1月効果を期待した人の買いが集まり、12月21日~23日に若干の出来高を持った上げ相場を生じています。恐らくこの時点で売り、というのが一応無難な取引だと思います(2020年中の所得になってしまいますが。)。

なお、自分は12月21日に入り、12月24日に売りました。
1月効果と言っても12月には始まっているのを実感。

もう少し持つならば2月15日位まで持つ戦略もあるようです。「Stock Trader’s Almanac 2021」にも書いてあるとおり実績も良いです。ただ、元々不人気の株式を長期で持つのは相応のリスクを伴うので、リスクを減らすために、

「1週間~2週間で上がったのを確認したら売る」
「2週間で動きが無かったら売る」

という戦略を立てると良いと思われます。

まとめ

1月も1週が過ぎ、流石に1月効果はほぼ終了かと思います。

しいて言えば中期的にみて、タックスロスセリングで売られた優良株の株価が下がったままになっている優良株を拾うチャンスかもしれません。

この投資法は初心者でも対象銘柄がわかれば十分再現性もあると思います。

重要なのは5点です。

・1月効果は、所得税の損失相殺のための売り(Tax Loss Sellig)と買戻し(Dead Cat Bounce)を期待した投資法
・12月15日に入り、12月末に売るのが無難
・投資家がある程度利益が出ている年(一方向に下げた年などはダメ)に生じやすい
・小型銘柄でその年大きく負けた銘柄を買う
・効果が出なくても1月効果狙いなら長期保有しない

※20210112 Wash Sale Ruleについて追記

次の年末までに可能性の高い銘柄を整理しておきましょう。
Twitterなどでもいろいろな情報を聞けると思うので、Tax Loss Sellingなどで検索してみるのも一つだ思います。

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