コロナで税金の支払いが困難な場合の猶予制度【換価の猶予】

リュウです。

昨日は、スタジオジブリの名作「魔女の宅急便」を見ていました。
ブログで1回じゃ書ききれないくらい色々思い入れのある作品です。
本題とは異なるので、いずれ触れようかと。

 

コロナウイルスの影響で、関東地方は積極的な外出が禁止に。

神奈川県民なので土日は出歩けません。
 

平日にウイルスが広まっているような気もするのであまり意味がないと思っていますが、リスクを高める必要はないので、今日はおとなしくしています。

 

さて、本題。
先週の延滞税の話で若干触れた、「換価の猶予」の話でもしようと思います。

税理士試験の国税徴収法で割と高頻度で出る上に、タイムリーすぎるため今年出題される可能性もあります。
(流石に、ここまでド本命になってしまうと出ない可能性もありますが。)

今年は、コロナウイルスが広まっているため、税務署も猶予制度を積極的に広報しています。

 

先日、実際に換価の猶予を税務署に申請してきました。

そこで今回は、「換価の猶予の法令、メリット・デメリット」を中心に書いてみようと思います。
 

次回は、原稿が間に合えば「実際に換価の猶予の提出をした話」を書こうかと。


※税金を一括で納付は厳しいと判断したら、税務署に早めの相談を受けるべきです。

 延納や納税緩和制度などで資金繰りを改善すると、安心感を得られます。

●もくじ
1 換価の猶予とは
2 換価の猶予のメリット
3 換価の猶予のデメリット
4 納税の猶予

1 換価の猶予とは
換価の猶予(申請によるもの)は、国税(国税徴収法151条の2)及び地方税(地方税法15条の6)の徴収緩和制度
です。

この猶予を認められると一定期間、換価(差押えた財産を現金に換えて税金に充てる処理)が猶予されます。

なお、換価の猶予には「職権で認める換価の猶予」と納税者等の「申請による換価の猶予」の二つがあります。
(それぞれ、税理士試験だと必須項目です。)

概ね、災害などにより適用を受けることが多い制度ですが、今年は、コロナウイルスよる影響(親族が罹患したことや事業の不振等の理由)も換価の猶予の対象になりうることを国税局で案内しており、受けることを勧める記事も出ています。

新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ(国税庁)

ただ、税務署等に相談にいけば認められるわけではありません。

任意の分割納付を認めてもらうのと違い、書面の提出や資料の提出、必要に応じ担保を要求されますが、それに見合うメリットもあります。

該当条件は、「納税の猶予(徴収の猶予)」の規定を準用しています(国税通則法46条2項)

 ①【被災】 震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難を受けたで財産に損害を受けた
②【本人又は親族の疾病等】 本人又は生計を一にする親族の病気又は負傷
③【事業の休廃止】 納税者の事業の休廃止
④【事業の著しい損失】 事業に著しい損失を受けた
⑤【その他】 これらに類する事実

という4+1点です。

2 換価の猶予のメリット
換価の猶予が認められたときのメリットを整理しておきましょう。
他にもメリットはありますが、重要なのは大きくこの3つといえるでしょう。

①法的に認められた分割納付制度であること
通常の、税務署や市役所で「5ヶ月に分けて納付するから納付書を5枚でもらえないか」と相談して、納付書をもらうのは換価の猶予ではありません。

申請を行い、税務署等が審査します。

 ・事業や生活の維持が困難等の理由がある
・分割した方が税務署等にとっても有利と判断
・納税の意思があると認められる
・換価の猶予申請する以外の税金の未納がないこと

等が認められる場合、最大で1年間の猶予(分割納付)が認められます。

細かい部分ですが、法的に認められた制度なので、税務署等が拒否した場合の不服申立制度があることも一応メリットに含まれるといってもいいかもしれません。
(審査請求や訴訟をするのは、税金を支払う以上のお金と手間がかかる思うので通常行わないと思いますが。)

②処分が緩和される
換価の猶予が認められると、猶予期間は現時点で差押えられているものも換価されることはありません。

確実な納付を書面で約束する代わりに、徴収職員(徴税吏員)の判断でお金に換えられない。

と考えるべきでしょう。

差押えも解除される場合があります。(これは税務署等の判断によります。)

③延滞税が減免になること
これが一番のメリットと思われます。

換価の猶予が認められることで、延滞税が減免されます。
通常、コロナウイルスの換価の猶予のケースならば、半額の減免を受けることになると思われます。

原則によると、延滞金は期限から2ヶ月以内(地方税なら1ヶ月)なら年2.6%、それ以後が年8.9%です。
これが半額減免になるのですから、負担がかなり軽減されます。

加えて、実際には半額以上延滞金が軽減されます。
2020年の場合、猶予期間中は「年1.6%(特例基準割合)」まで軽減されます。(租税特別措置法94条2項)

例えば、10万円の未納で猶予期間1年で1,600円、50万円で8,000円の延滞金で済むよう認めてもらえます。

(原則なら、10万円で目安で年7,800円程度、50万円なら年39,000円程度!)
 

銀行で担保付きで年3%で融資を受けた場合は10万円で年3,000円であることと比べると、融資を受けるより負担が減ることになるので、融資を受ける並の効果を受けることが可能です。

(今回のケースなら融資と換価の猶予の併用も出来ると思います。)

3 換価の猶予のデメリット
ただし、一方で換価の猶予には不利な部分もあります。

換価の猶予制度は、税務署や市役所に情報提供しなければなりません。

税務署等は、納付を待つ裏返しに、納付をしなかった場合は猶予を取り消し(民法的には解除に近い)され、差し押さえなどにつながるよう、財産情報を主とした情報提供を求めます。

 

リスクは以下の4点くらいだと思われます。

①税務署への情報提供
税務署も、生活が苦しいかどうか、納付できるかどうかなどを聞き取りします。
上述の通り、苦しさを伝えるためにウソをつけば一時的に認められやすいかもしれませんが、バレたら猶予は解除されることが見込まれます。

②財産情報の提供
猶予を受ける金額が100万円以下の場合は「財産収支報告書」を、
100万円超の場合は、「収支の明細書」と「財産目録」を提出し、原則的に担保を提供する必要があります。
(3ヶ月以内の分納などは不要。)

法令を読む限り(国税徴収法152条4項で準用している国税通則法46条の2第4項)だと、どのケースでも財産目録を提出する必要があるように見えます(担保の100万円ルールは明確。)が、国税庁のページの運用を見る限り、100万円を区切りに若干簡易な様式を提出すれば済むようです。

各様式は国税庁のホームページにあります。
(自治体については提供があったりなかったりしそうです。)

③担保の提供
猶予する税額が100万円超の場合は原則担保を提供する(又は差し押さえされる)必要があります。
(国税徴収法46条5項・地方税法)

そのため、無傷では住まない場合があります。

所有不動産に税務署や市役所の抵当権の履歴がつくことを好ましくない人もいるかと思います。

④新たに差し押さえられる場合もある
換価の猶予の規定は、「財産の換価」を猶予する規定です。
そのため、状況によっては「差押え」まではされる可能性があります。

(基本的には③の時に担保提供(又は差押え)すると思われます。

差押えは登記できない財産として、生命保険などなのかもしれません。)
 

差押えは徴収職員の裁量によるものなのでなんともいえません。

とはいえ、猶予期間内に猶予を受けていない人より先に差押えが行われるとは思えないのでそこまでリスクは無いと思います。

4 納税の猶予
参考程度に納税の猶予も説明。
納税の猶予は、上述の通り国税通則法で規定されている徴収緩和制度です。

申請による換価の猶予制度ができた(かつては職権による換価の猶予のみ、2015年から)ためか、似ていて紛らわしいですが昔からある制度です。
細かい特徴は予備校に説明してもらうとして、こちらは主に以下のようなケースで該当します。

 ① (納税義務が決まって申告前(≒納期限前)に)被災(46条1項)
② ①以外で被災や傷病、事業不振等(46条2項)【換価の猶予の要件と同じ】
③ 課税遅延(1年以上前のものが急に届いたようなケース)(46条3項)

細かな部分は、予備校の先生に説明を譲るとして、通常は換価の猶予を使うようです。

●まとめ
今回は理論的な要素を整理。
参考法文が多すぎるので、今回は載せません。条文から引いてもらえればと思います。

 

重要なのは3点。

 ①換価の猶予は法的に認められている分納制度
②原則1年間の猶予期間で分割納付、延滞金が減免になる(年8.9%→年1.6%)などのメリットがある
③100万円超の税額の場合、担保の提供又は差し押さえを受ける等のデメリットなどもある

理論的なところは、国税徴収法受験者以外は面白くない(国徴は頻出ですので必ずおさえましょう。)と思います。
 

次回は、書けたら実際に申請しにいったことにしましょう。

こちらのほうが実用性が高いと思います。

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