残りの税法1科目はあの科目を受けるべし

税法大学院(東亜大学)
2012年税理士試験(幕張メッセ)

税理士試験の税法免除大学院について記事を書いてますが、今日は試験の話。

税法の免除を受けるにしても1科目は合格しなければならないため、税法科目についてもクリアしていかなければなりません。

今日については結論を先に書いておきます。
大学院生に相性の良い科目として、個人的には「国税徴収法」をお勧めいたします。

1科目は合格しなければならない

現在の大学院の学位による免除制度の内容は、税法にせよ、会計科目にせよ、「1科目合格」しなければなりません。

したがって、残りの1科目をどうにかしなければなりません。
(東亜のOBの方と話した際に聞いたところ、同級生で10年経っても税法の1科目が取れず悩む人がいるそうです。)

会計科目は比較的何とかなる

会計科目を免除できる場合は、簿記論と財務諸表論のどちらかをクリアすれば済みます。どちらも必須科目で、会計分野として範囲が重なる部分も多く、併走しながら両方を受験し出来ます。

また、簿記論、財務諸表論の両方を受け、片方合格で残りを免除する方法で良いので、会計免除で悩んだ方はあまりいないと思われます。

税法科目をどうしたものか・・・

さて、本題の税法科目についてはどうでしょうか。

大学院を経由して税理士を目指される方のほとんどは会計科目の免除ではなく、税法科目の免除のために大学院ルートを選んだ人かと思います。(当然、自分もです。)

そのため、入学した時点で税法科目を持っている人は、正直うらやましかったものです。しかも授業や論文に専念できるアドバンテーもあります。
大学院を決意したときの自分の合格科目は会計2科目だけだったため、最後に受けるべき1科目をどうするか悩みました。

同級生の中には、敢えて在学中には税理士試験を受験せず、卒業後にクリアしようとする人もいましたので、大学院期間は「敢えて受験しない」という戦略もあります。

税理士試験と大学院の両立については、前回の記事も参考にしてください。

税理士試験と大学院の両立について

科目ごとの検討

では、具体的に科目ごとに検討して行きます。

▲所得税法・法人税法

苦労すると思う科目筆頭は、所得税法、法人税法です。

この2科目は、税理士試験の花形科目であり必須科目です。実務でも役立つ内容です(特に法人は)。

また、院生のほとんどは所得税法、法人税法の研究をすることになるので、問題点を見出すという面でも相性はかなり良いでしょう。(相続税法・国税徴収法・国税通則法もそこそこ多い。消費税法は政策論になりやすいため、研究テーマとしては少なめのようです。)

しかしながら、大学院で税法科目の免除をしようとする方は、この科目がネックとなり進学した方も多いのではないでしょうか。

自分は両方受けておりますが、共に不合格です。
(自分はカリキュラム全部を受けた程度で、受験合格レベルとは言い難く、どちらも不合格のB評定でした。)

受験した人はわかるかと思いますが、ボリュームが並大抵ではありません。「合格レベルまで仕上げられた人も一定数」という事実もあります。ある意味で、努力量が結果に反映される科目ともいわれています。

故に、大学院ルートで論文を書く時期に、わざわざこの2科目を狙って受けるのは茨の道と言えるでしょう。税理士試験の官報合格を目指す上で必須ですが、認定合格を受けるために敢えて受ける科目とは到底いえません。

ただ、実際のところ、1年後輩の東亜の人で法人税法クリア後に入学した人もいましたので、相性はあると思います。

▲相続税法

結論からいうと、「ライバルが屈強すぎなのでやめたほうがいい」と思います。

相続税法は人気科目です。
そして、これから先の税理士業の実務的にも一番旬な科目でもあります。

そのため相続税法受験者は、5科目合格(官報)直前の上級者の受験生も多いと聞きます。(税法初学で、相続税を1年で難なく受かった事例も聞きますが、現実的には厳しいところです。)

自分としても、勉強した科目の中で唯一受験をすることなく終えた科目です。
試験を終了した今、逆に勉強しておりますが・・・。

同様に税理士試験の認定合格を目指す上で敢えて受けるには厳しいでしょう。

○消費税法

消費税法は、比較的オススメの科目です。

税法で一番受験者が多く、1日目に実施されるため、簿記論、財務諸表論と共に受験する方が多い科目です。

理論暗記の題数は少ないです。
とはいえども、題数はともかく、法文がやたら回りくどい言い回しなので、 私的にはかなり苦手意識があった思い出があります。

あとは、最近は法改正が続いて実務家として改正を追いかけられる人ならそこそこのアドバンテージがあると思います。

さて、受験向きかについて、大学院在学中に、同級生で消費税法を通った人がいるというのもありますが、おすすめできる科目のひとつです。

最初に説明したとおり、受験生の「母数が多い」ことがあげられます。
税法で最大、約8,000人の受験生がいます。(平成29年度実績)
合格率が同じならば、母数が多いことで、合格者数が多くなります。

そして、「1日目であるため、税法の記念受験者が相当数いること」も想定されます。
簿記論、財務諸表論と共に受ける人がいるため、完成度が多少低くても受験する方も相当数いるようです。

結論として、比較的オススメしやすい科目です。
上述のとおり、消費税法は院生レベルだと政策論に入りがちな分野(例えば、消費税率をさげるべきであるとか、仕入税額控除に○○を加えるべきとかは明らかに政策論です。)研究とのシナジーは得づらいかもしれません。

△各ミニ税法(酒税法、事業税、住民税、固定資産税)

ミニ税法(後述、国税徴収法を除く。)もねらい目ではありますが、相当の完成度を要求されるため、どれくらいまで完成させればいいか、その見極めが難しいという問題もあります。

大学院の免除を受けようとする人も、
他の受験生と同様、ミニ税法を選択する人はいます。

とはいえ受験者数自体は少なく、税法合格をしたときの資格のO原の合格祝賀会で、23テーブルあったうち、「週一科目(酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税(結果通知書の順番))」と記載されたデスクはなんと2つ!

ちなみに、平成29年(67回)試験では、12月の合格祝賀会では、簿記論3テーブル、財務諸表論4テーブル、法人税法3テーブル、所得税法2テーブル、相続税法3テーブル、消費税法6テーブルでした。

テーブルの少なさの話もそうなのですが、ミニ税法は合格者数が少なく、歴戦の猛者たちとその少数の枠をかけて戦うので、想定以上の難関になるリスクがあります。

一方でこれらのミニ税法は範囲が狭く、大学院の勉強をしながら合格ラインに近づくことは可能です。

ただ、ミニ税法における合格ラインと、合格の間には大きな幅があります。
ミニ税法の各科目ともにかなり高い完成度を要求され、ワンミスで退場になります。

その高い完成度を作るために、ある程度まとまった分量の反覆練習が必要となります。
(都市伝説レベルですが、100点でも不合格だったと言う話も・・・)

私も、住民税を大学院受験前の2年間と、大学院1年のとき受験したのですが、すべて不合格。(割と自信ありでした。)3回受けてA以上を出せませんでした。

この科目、合格したつもりになるところまでは行くんですよ。
そして、「だからこそ来年は通る(ような気がする)」でも通らない。

オススメしたいと言いたいところなのですが、オススメしきれないんですよね。

そこで最後に紹介する科目になります。

なぜ国税徴収法か

最初にも結論として書いたとおり、大学院ルートに一番相性のよい科目と思っています。
これには3つのポイントがあります。

 1 受験生が1000人を越える科目
 2 スキマ時間で勉強しやすい
 3 作文による回答スタイル

受験生が1000人を越える科目

国税徴収法は、税理士試験のミニ税法の中で唯一1000人以上受験している人がいる科目です。(個人的に消費税はミニ税法に含めません。相続税も同様です。)

受験生が多いと合格者数も増えます。

ここは個人的見解ですが、一見、合格のパーセンテージは他科目と一緒なので、難易度は同じように思われますが、受験生のなかで合格確実といわれる最上位層の人数は、一定数で打ち止めと思われます。

受験者数が増えると、最上位層を除いた合格枠が増えていき、他のミニ税法のような、極限の出来の争いになりづらくなります。(この点では消費税法も同様かと思います。)

スキマ時間で勉強しやすい

1については、やや都市伝説にも思えるかもしれませんが、2は、勉強法の話なので間違いなく当てはまります。

計算がある科目は、40~80分くらいのまとまった時間が必要になり、院生は、日常生活以外のまとまった時間を論文を書くのに使うため不利です。

ところが、「国税徴収法は理論しかない」ため、合間合間に理論暗記や理解をする時間が作りやすいのです。私は、通勤時間や、子供(赤ちゃん)の寝かしつけの時間に暗記を進めました。
今となってはいい思い出です。

作文による回答スタイル

大学院生は、法学論文を書かなければならないため、普段から裁判例や法律書などの文献を読みなれています。

また、自分自身でも法学論文を書くため、法律の文章を書く技術力は、受験専門の方よりアドバンテージがあります。

かつて、T●Cの講師の先生に、自分の合格を報告した時、
「税法免除の方は、割と国税徴収法を受けていますね。」と言っていました。

なお、私自身は、国徴は大学院の2年間で合格しました。
実は大手予備校2校とも受けてたりします。

国税徴収法も、規模は違えど所得税法や法人税法と同様、比較的努力を裏切らない科目だと思っています。

整理すると、暗記して事例にあてはめる。丸暗記ではなく作文が多く、暗記と同レベルかそれ以上に理解が必要。
そして、速度があまり必要ない(時間が余ります。)科目です。

なお、私自身は、もう一つアドバンテージがあったのでこの科目にしています。
その話は、このテーマと大分違う話なので、またいずれどこかで書きます。

以上の点から、私的な見解としては、「国税徴収法を選び、大学院の勉強の合間に全力で暗記し続けて受ける」べきであるといえます。

次点が消費税法、あとは受験生の数でミニ税法の中でも固定資産税辺りになるかなと思います。

もっとも、大学院を受けるまでに勉強した科目が合格直前なら、初学に比べ、かなり勉強量が少ないと思うので、突き詰めれば十分合格は可能かと思います。

社会人の方は、大学院の時間と仕事の時間のバランスを取り、計画的にスケジュールを立てて勉強することです。

在学中の税理士試験は、苦労を伴うことは言うまでもありませんが、クリアした時に達成感がありますので、3科目でない方は、是非チャレンジしてみるとよいかと思います。

皆さんが、大学院を無事クリアして、
税理士になれることを祈っております。

あきらめず、Let’s TRY!

※2020.5.12 レイアウト等を修正

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