「その保険はトクであるか」を考えるために必要なこと

ファイナンシャル・プランニング

仕事を辞めるに向けて、保険を加入し続けるかの判断が必要になりました。
今日はそんな保険の検討にあたって考えたことを残しておこうと思います。

※今回の記事は、自分の事案の検証としての性質もあります。
 普段以上に参考程度にとどめてもらえれば幸いです。

最初に一番大事なこと。

保険は「失敗に保障」を提供する「商品」です。
若干誇張すると「我々が失敗する側に賭けるギャンブル」とも言えます。(こんなことは保険会社は絶対に言わないと思います。)

そのゲームで誰がカモなのかがわからなければ、あなた自身がカモである。 ウォーレン・バフェット

辞める準備としての保険

保険なんて貧乏人が加入するものです。
リュウさんが保険に加入しているのは意外だなぁ。

このシビアな言葉は、私が投資を始めた頃(10年ほど前)に投資のみで生きていたお方(師匠とまではいわないものの尊敬してました。)の言葉。

言葉こそ荒いですが、「保険も損得あるから気を付けろよ」と言いたかったのだと思っています。
(私自身、検討したうえで生命保険等に入っています。)

自分は、現時点で職場の団体保険に加入しています。
団体保険とは、一定の企業に保険会社が「団体でまとまって入る(ことによって営業コストを減らす)代わりに割の合う契約を提供してくれる」という保険です。

特徴としては、「割と配当金(事業経営上で使い切らなかった保険部分が返ってくる)」や「退職後も継続できる」というようなサービスです。

企業によっては団体保険はありません。
そのため、必要な記事かは人によるかと思います。

一方で、あった場合は検討の余地があります。
辞めると退職後は、既存契約の継続できるものもあるため、一度しっかり損得を見直してみようと思っています。

「その保険はトクであるか」を考えるために必要なこと

(全ての)保険なんて加入する必要はない。
と単純に考えるのは早計と思っています。

保険金がいくらもらえるか、そのためにどれくらい払うか。
要は掛金と期待値(リターン)を比較して、トクな保険かどうかを判断する
ことが大切です。

現在加入中で退職後も継続できる、①医療保険、②収入保障保険、③がん保険、④その他の保険について検証します。

(1)医療保険

まずは、医療保険を題材に。

①医療保険に役立ちそうな統計

医療保険は概ね、「入院した時の給付」「手術をした時の給付」の合計となります。

保険事故(要は保険金が下りる疾病の罹患など)発生確率などは、公益財団法人 生命保険文化センターの出している、主要傷病別にみた入院受療率(人口10万対)の年次推移が参考になると思います。

この資料によると40代の入院率、男女全数では、
 40~44歳が311人/10万人
 45~49歳が398人/10万人
となっています。

参考程度に、大体10万分の360程度(0.36%)としましょう。

保険会社のCMなどでは、
親ががんにかかったり死亡したりしたあと、保険金が子の学資になり、
「保険に入っていた良かった」
となるわけですが、

そんな人は確率は1000人に4人いない程度のようです。
この事実を認識しておきましょう。(賭ける(掛ける)なとは言いません。)

次に給付額計算のために、入院日数を調査。
楽天生命の40代におすすめの保険の選び方 死亡保険・医療保険・がん保険別にご紹介で、入院した時の日数の平均は、

40~44歳 19.3日
45~49歳 20.0日

のようです。
若干長い気もしますが、20日としても問題ない範囲だと思います。

②検証

イ 保険料

具体的に比較していきます。

私が加入している団体保険は、
1日5,000円の給付(免責日数なし)、手術については2.5~20万円、死亡保険は60万円もらえます。

保険料は40代で平均大体月2,500円、返戻率が40%くらいです。(良い数値かは不明。)

したがって、月額は2,500円×(1-40%)=1,500円
としましょう。

ロ 給付額

もらえる額は、手術あり(5万円給付としましょう、死亡はしない。)として、

 入院 5,000円×20日=100,000円
 手術 50,000円
 死亡 ゼロ
 合計 150,000円

くらいになると思います。

ハ 比較検証

保険料は、10年で
1,500円×12月×10年=180,000円
です。

40代で入院して医療保険をもらえる期待値は、

ロをもらえる期待値は、入院したら必ず手術するとして、

(100,000円+50,000円)×360/10万=540円

参考数値(給付期待値/保険料)
540円÷180,000円=0.003(0.3%)

(被保険者がトクする確率:参考)

実は、今回の記事を書くにあたり、期待値を実際に計算してみたのが初めてだったのですが、計算を間違えたかと思うくらい低めです。

40代の10年間、18万円払って540円の期待値のものにお金をかける。
ちょっとベット(賭ける)する側は不利ですね。

40代は医療保険分全額を投資するとして18万円分のお金をつくるほうが現実的かもしれません。
(なにせ8年半(15万円÷1,500円÷12月=8.33…)で給付額を超えてしまうので。)

入院する確率が想定より低すぎですね。

何となく、週に2,3回、昼休みに保険のおばちゃんが職場に来て、医療保険とがん保険を勧めるのがわかるような気がしてきました(´・ω・)

下手すると保険料5分の1くらいでも十分採算がとれるかもしれません。

(2)収入保障保険

次に、収入保障保険の制度。

死亡、重度障害になった場合、生命保険の保険金を月額の収入に加算して配偶者等に支給します。
(一括給付はないですが、一括給付による運用益は今回は考慮しません。)

さて、期待値を計算するにあたり、厚生労働省の資料に「生命表」というものがあります。
これを基に生命保険会社も保険料を計算していると思われます。

一番左が年齢、次が死亡率(累計で1が100%)となります。
要は、年齢の時点で死亡している人の割合が表示されます。

厳密には10年後の数値で比較するのが正確ですが、40歳の人が50歳まで生きる確率は、「50歳の死亡率-40歳の死亡率」でおおよそ求めることが出来ます。

参考として、男性で40歳の人が50歳までに死亡する確率は、

(0.00245—0.00093)=0.00152=0.152%

となります。

保険料給付額の期待値計算。
1000万円給付として、

1000万円×0.152%=15,200円です。

さて、私の入っている団体保険は、
41~50歳(これは41歳からの計算でした。)
保険料が月2,700円です。
返戻率が約45%のため、2,700円(1-45%)=1,485円/月です。

10年で、
1,485円×12月×10年=178,200円
です。

参考数値(給付期待値/保険料)
15,200円÷178,200円=0.0852…(8.52%)
(被保険者がトクする確率:参考)

10年で178,200円を払って、もらえる保険金の期待値は15,200円の保険です。
(実際は重度障害分を加えるため、保険料の約10%くらい回収できると見込んでいます。)
医療保険ほどではないですが、これも支払保険額に対し10%程度のメリットしかありません。

一方、医療保険に比べ期待値(リターン)が10倍程度であること、保険金が高額であることを加味。

安くは無いけど、レアな状況で保険事故があったときのためにこちらは加入してても良いかもしれません。(それでもベットする(賭ける)側はかなり不利である認識をしておきましょう。加入せず(賭けず)積み立てたほうが良いかもしれません。)

(3)がん保険

がん保険単体ではないですが、心筋梗塞、脳卒中などを含めた商品がありました。
がんの診断結果が出たら300万円。(他の疾病の特約あり)
他の疾病にかかる確率もあるため単純比較はできませんが、がんの発生率をもとに検証。

期待値計算にあたり、令和元年「全国がん登録 罹患数・率 報告」という統計から推測してみました。

P20のグラフを見る限り、男性では乳がん・子宮がんを除く(乳がんなどは男性も稀にあるようですが、確率を解説したページがないため原則かからないものと判断。)

胃・大腸・肺の罹患率は、それぞれ10万分の50未満。
合計で大きく見積もって10万分の100程度(0.1%)としてみます。

期待値 300万円×0.1%=3,000円

保険料 40代平均月1,900円程度。
1,900円×12月×10年=228,000円

参考数値(給付期待値/保険料)
3,000円÷228,000円=0.0131… (1.3%)
(被保険者がトクする確率:参考)

228,000円をかけて、保険金の期待値は3,000円程度です。
これも医療保険同様に期待値が低く、他の疾病を考慮し期待値を3倍にしても期待値4%程度です。
ものすごく不利といえます。

保険金300万円と高額のため、収入保障保険同様に万が一のレベルで発生時を考慮し検討しても良いですが、本当に必要かどうか・・・。

(4)長期入院特約や先進医療特約

退職後延長できるもので、該当するものがなかったです。

この辺りが保険事故率が低い代わりに、保険料が安く、給付も全額出ます。

医療保険とセットなことが多く見かける保険もありますが、自分の加入する団体保険には存在せず。(退職しなければ長期入院特約はあった。)保険会社もメリットが少ないのか、商品そのものがありませんでした。

結論

まだいろいろと検討中なので、暫定的な結論を出します。

若い時期に医療保険は無駄と云う方もいますが、実際にどうだったか。

検証の結果「正直、あながち間違いではない」ですね。
保険金の期待値が低すぎな割に保険料が高すぎです。

保険会社は、かなり厚く儲けているかもしれません。
保険屋のおばちゃんが職場を歩き回って営業する価値(人件費をかける価値)があるのでしょう。

自社の団体保険は安めと思っていましたが、それでも保険会社が厚く利益を出せるプランであることが良くわかりました。

収入保障保険(生命保険の年金払い)が給付額(万一の時に一括で出せない規模の給付のため)と期待値でギリギリ検討材料か。

保険事故でも20万円しかもらえず、さらに10年間保険料を積み立てた額の方が多い医療保険などは対象から外しても良いと思います(自分で積み立てて入院しなければすべて手残りですし・・・)。

まだ、当方の契約更新までの期限があるので、他の保険と比較して検証してみようと思います。

保険の検証で大事なことは3点。

 ①良い保険かどうかは期待値で判断する
 ②期待値は、保険金に保険事故(例えば疾病に罹患)となる確率と、
  保険料の総額で比較してみる
 ③医療保険、がん保険は保険事故率に対してリターンが低すぎる(期待値が低い)

最後にまとめ。

保険はいざというときの備えという性質を持ちます。
ただ、一方でしっかり貯蓄をできている人はムリに入るものではないのかもしれません。

日本特有かもしれませんが、保険に対するリターンが低すぎる。
宝くじですら賭け金(掛金)の40%程度の期待値なのに、期待値1~2%の医療保険、がん保険は、保険料が高すぎではないかといったところ。

一方で、転職・独立してから事業が安定する10年くらいは、相応のリスクを抱える時期と考えています。ある程度不利でも支払っても良いのかなと思ってます。

失敗する確率が低い(例えば1%未満)とき、自分で支払えない規模の損失を補償する保険金(例えば1,000万円など、即金では準備しにくい規模の損失補償)でなければ、賭けなくて良いといえます。

貯蓄で対応していきましょう。

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