税金を放置すると支払いが加算される?延滞税(延滞金)の割合について

リュウです。

 

職場は年度末のため多忙の中の3連休。

毎年、春分の日は、忙しいながら休むべき日と決めています。

今日は、娘と再度モノレールに乗ってきます。
コロナの所為で遊び場が減りましたが、湘南モノレールは空いているため、比較的乗りやすい路線です。鉄道好きになってくれるのが楽しみ。

最近の娘の状況。
「忍たま乱太郎」のアニメを見てて、「にんたらまんたろう!」と言うように。
言葉や音楽を何でも真似します。覚えるのが早いわけです。

さて、本題。
今日もマニアックな国税通則法(地方税法なら総則)の話。
一応、住民税でも理論マスターに若干載っている話。

「延滞税(延滞金)の割合について」(長くなるので、用語に矛盾がない限りは「延滞税」で統一)。

後述しますが、一部の科目でたまに出る以外は、延滞税の話は出題されません。
ただ、今年は改正論点(それでも出題されないだろうけど)なので、書いてみようかと。

なお、今日の記事は解説要素が強いので、マニア向けの記事と思います。

現行の延滞金の割合の結論だけ知りたい方は以下の国税庁のリンクを参考にしてください。地方税、公課も、(法定)納期限直後の低い割合の期間が「1ヶ月」である以外は、同じ割合です。

(国税庁:延滞税の割合

●もくじ
1 延滞税の話
2 延滞税の割合の法改正
3 計算方法
4 延滞税の減免の話


※春が来ました。(2020.3 横浜市栄区)

 

1 延滞税の話
(1)税理士試験における延滞税の話
最初は、税理士試験と延滞税について。
結論として、税理士試験で延滞税を取り扱う科目は少ないです。

私が試験・授業や模試を受けた中で出題されそうな気配があったのは、住民税(退職所得の現年分離課税制度)と国税徴収法(緩和制度等の延滞税の減免)のみ。
これは、「他の科目は通則・総則的な要素の強い延滞税以外に重要な論点が多いこと」と、「国税庁としては納税者は期限内納付が前提」となるからなのでしょう。

法的根拠としては、国税は国税通則法60条に、地方税は例として住民税が326条(他の税目は略)に、延滞税の特例の割合は租税特別措置法93条等に載っています。

(2)制度概要
(法定)納期限までに税金を納付しない場合は、延滞税が発生し、一定額以上になったら支払わないといけないという、ペナルティの性質を持つ税金が延滞税です。

法定納期限と納期限は、税目や税の決定方法(申告か、決定か、修正か等々)異なるのですが、概ね、

・申告する税目(法人税・所得税・法人住民税等)は、「法定納期限」の翌日から
・課税される税目(住民税・固定資産税・国保料(税)等)は、「納期限」の翌日から

 

発生すると覚えておくといいと思われます。

申告を遅れると、いきなり延滞金がたくさん発生するところからスタートする場合があるので注意。

(3)用語
既に「延滞税」という言葉で統一していますが、
国税では「延滞税」、地方税・公課では「延滞金」と異なる用語を使っています。

しかしながら、若干の運用が異なるものの「実態は同じもの」と考えて良いようです。
計算方法や必要経費・損金に出来ない点も同様です、用語が違う理由は不明です。

とはいえ、国税と地方税で用語が違うものは他にもいくつかある(繰上請求と繰上徴収など)ので、気にしても仕方ないことだと思われます。

 

2 延滞税の割合の法改正
今回論点に触れたのは、前述の通り「今回の税制改正で法改正の対象になっていた」ため。納税者側にメリットのある改正ですが、期限内納付する人に関係ないのでひっそりと改正されたように感じました。

延滞税の割合は平成に入ってから何回か改正を重ねてきました。
この低金利のご時世、原則法だと高すぎる延滞税の割合について「特例基準割合」を基にした延滞税の割合が制定された経緯があるようです。

来年1月以降の法改正も含めて延滞税の割合は4種類
(法定)納期限直後の低い負担割合と以後の割合の2パターンあるので、未納になった期間に応じ、「8種類の割合」が存在します。

4つの計算方法は、「原則法」「(旧)特例基準割合」「現行特例基準割合」「(改正)特例基準割合(現行のマイナーチェンジ)」です。1個ずつ解説

(1)原則法
原則法は、先ほどの国税通則法60条2項と、地方税法326条1項(住民税)のとおり、

 ・(法定)納期限の翌日から2月(地方税等では1月)を経過する日までは、年7.3%
・それ以後は年14.6%

の割合を乗じます。(なお、1年が366日の年でも365で割ります。)

これは、客観的に見ても市場のゼロ金利と比べて物凄く高いです。
そのため、特別措置として軽減された割合を置くことになったようです。

(2)(旧)特例基準割合(H12.1.1~H25.12.31)
上述、延滞税の割合が高すぎて問題視されていたようで、制度の改正が行われました。
(法定)納期限の直後に限って、延滞税の割合が下がりました。

これらの規定は、「租税特別措置法」に載っています。
出来れば法文を資料に載せたかったのですが6年前の改正だからか、無料でネットにありませんでしたので仕組みだけ。

特例基準割合とは、「各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法15条1項1号の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4%の割合を加算した割合」です。

・・・見るからにわかりづらいですね。

日本銀行法なんちゃらを簡単にすると、「公定歩合」のことを指します。
したがって、「公定歩合+4%」になります。

 ・(法定)納期限の翌日から2月(地方税等では1月)を経過する日まで  年(公定歩合+4)%(平成25年の最後に使われた割合が4.3%)
・それ以後  年14.6%

となります、まだまだ高いですね。

(3)現行特例基準割合(H26.1.1~R2.12.31の予定)
(2)の割合も結局2ヶ月を超えれば年14.6%の延滞税が生じるため、高いという批判が多かったのでしょう。
単利とはいえ、短期間なら街金に借りて納付してしまったほうが安いかもしれません。

そこで、平成26年施行の更なる改正が行われました。

今度の特例基準割合は、
「各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として12月15日までに財務大臣が告示した割合に1%を加算した割合」です。

相変らず、国がわざとやってるのではと思えるくらいわかりづらいですね。
ざっくりいうと、「12月15日までに財務大臣が告示した割合+1%」です。

今年の割合については、H30 財務省告示第336号を参照してください。

租税特別措置法第九十三条第二項の規定に基づき、平成三十一年の同項に規定する財務大臣が告示する割合を告示する件、麻生大臣の名前で告示されていますね。

延滞税の割合は、特例基準割合を基に、

 ・2ヶ月以内(地方税は1ヶ月以内)  特例基準割合+1%
・それ以後  特例基準割合+7.3%

となっています。

よって令和2年1月~12月の割合は、

 ・2ヶ月以内(地方税は1ヶ月以内)  (「0.6+1.0」+1.0 =)2.6%
・それ以後  (「0.6+1.0」+7.3 =)8.9%

となります。
大分下がりましたね。(それでも十分高いですが。)

(4)(改正)特例基準割合(R3.1.1~の予定)
更なる改正が令和3年1月からあります。

税制改正大綱のPDFを確認ください。(P81~P83)

特例基準割合を、「12月15日までに財務大臣が告示した割合+1%」から、「11月30日までに財務大臣が告示した割合+0.5%」にするようです。

割合もさることながら、早めに情報がもらえるようになったようですね。
このあたりも、ものすごくひっそりとマイナーチェンジしています。

今年の告示を参考に延滞税を計算するなら、
延滞税(参考)は、

 ・2ヶ月以内(地方税は1ヶ月以内)  特例基準割合+1% = (「0.6+0.5」+1.0 =)2.1%
・それ以後  (「0.6+0.5」+7.3 =)8.4%

となる見込みです、

(法定)納期限直後の割合はかなり低め7.3%→2.1%、長期的にも半分になり、大分負担を減らしたように思います。

3 計算方法
さて、実際に計算を・・・と思ったのですが、
計算方法は、1年ちょっと前に記事にしました。

国民健康保険料の計算式ですが、国税も地方税も年金や介護保険などでも変わりません。
厳密な計算方法なので役立つと思います。

税金の延滞税の計算方法の話

4 延滞税の減免の話
実は、一年半前にある理由で書かなかったのですが、流石に今年は少し触れておくべきと判断。
換価の猶予制度などを使うことで延滞税の減免を受けることができる場合があります。

記事にはしたいですが、これだけで1つのテーマになりうるので次回以降に。
なお、納税の猶予、換価の猶予(職権)、換価の猶予(申請)、これは国税徴収法の頻出範囲です。

試験では全くでない特殊な減免もあるにはありますが、そこは無意味かつ面倒なので割愛。

換価の猶予(申請)は、コロナの関連もあるため近く書けたら良いのですが・・・。
なお、国税も、換価の猶予につき今年については推しているように感じました。

5 参考法文
参考法文を掲載、まずは国税。

●国税通則法(抄本)
(延滞税)
第六十条 納税者は、次の各号のいずれかに該当するときは、延滞税を納付しなければならない。
一 期限内申告書を提出した場合において、当該申告書の提出により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないとき。
二 期限後申告書若しくは修正申告書を提出し、又は更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定を受けた場合において、第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき国税があるとき。
三 納税の告知を受けた場合において、当該告知により納付すべき国税(第五号に規定する国税、不納付加算税、重加算税及び過怠税を除く。)をその法定納期限後に納付するとき。
四 予定納税に係る所得税をその法定納期限までに完納しないとき。
五 源泉徴収による国税をその法定納期限までに完納しないとき。
2 延滞税の額は、前項各号に規定する国税の法定納期限(純損失の繰戻し等による還付金額が過大であつたことにより納付すべきこととなつた国税、輸入の許可を受けて保税地域から引き取られる物品に対する消費税等(石油石炭税法第十七条第三項(引取りに係る原油等についての石油石炭税の納付)の規定により納付すべき石油石炭税を除く。)その他政令で定める国税については、政令で定める日。次条第二項第一号において同じ。)の翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額とする。ただし、納期限(延納又は物納の許可の取消しがあつた場合には、その取消しに係る書面が発せられた日。以下この項並びに第六十三条第一項、第四項及び第五項(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)において同じ。)までの期間又は納期限の翌日から二月を経過する日までの期間については、その未納の税額に年七・三パーセントの割合を乗じて計算した額とする。
3 第一項の納税者は、延滞税をその額の計算の基礎となる国税にあわせて納付しなければならない。
4 延滞税は、その額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税とする。

地方税は住民税のみ(他税目も別の条文にあります。)

●地方税法(抄)
(納期限後に納付し、又は納入する市町村民税に係る延滞税)
第三百二十六条 市町村民税の納税者又は特別徴収義務者は、第三百二十条の各納期限若しくは第三百二十一条の八第一項、第二項、第四項若しくは第十九項の納期限後にその税金を納付する場合、同条第二十二項に規定する申告書に係る税金を納付する場合又は第三百二十一条の五第一項若しくは第二項ただし書、第三百二十一条の五の二(第三百二十八条の五第三項において準用する場合を含む。第一号において同じ。)、第三百二十一条の七の六(第三百二十一条の七の八第三項において準用する場合を含む。同号において同じ。)若しくは第三百二十八条の五第二項の納期限後にその納入金を納入する場合には、それぞれこれらの税額又は納入金額に、その納期限(第三百二十一条の八第二十二項に規定する申告書に係る税金を納付する場合には、当該税金に係る同条第一項、第二項、第四項又は第十九項の納期限とし、納期限の延長があつた場合には、その延長された納期限とする。以下この項及び第三項第一号において同じ。)の翌日から納付又は納入の日までの期間の日数に応じ、年十四・六パーセント(次の各号に掲げる税額の区分に応じ、当該各号に定める日又は期限までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した金額に相当する延滞税額を加算して納付し、又は納入しなければならない。
一 第三百二十条の納期限後に納付し、又は第三百二十一条の五第一項若しくは第二項ただし書、第三百二十一条の五の二、第三百二十一条の七の六若しくは第三百二十八条の五第二項の納期限後に納入する税額 当該納期限の翌日から一月を経過する日
二 第三百二十一条の八第一項、第二項、第四項又は第十九項に規定する申告書に係る税額(次号に掲げるものを除く。) 当該税額に係る納期限の翌日から一月を経過する日
三 第三百二十一条の八第一項、第二項、第四項又は第十九項に規定する申告書でその提出期限後に提出したものに係る税額 当該提出した日又はその日の翌日から一月を経過する日
四 第三百二十一条の八第二十二項に規定する申告書に係る税額 同項の規定により申告書を提出した日(同条第二十三項の規定の適用がある場合において、当該申告書がその提出期限前に提出されたときは、当該申告書の提出期限。以下この号において同じ。)又は当該申告書を提出した日の翌日から一月を経過する日

(略)

最後に延滞税(現行)の割合。

●租税特別措置法(抄)
(利子税の割合の特例)
第九十三条 次の各号に掲げる規定に規定する利子税の年七・三パーセントの割合は、当該各号に掲げる規定にかかわらず、各年の特例基準割合が年七・三パーセントの割合に満たない場合には、その年中においては、当該特例基準割合とする。
一 所得税法第百三十一条第三項、第百三十六条第一項各号、第百三十七条の二第十二項及び第百三十七条の三第十四項(これらの規定を同法第百六十六条において準用する場合を含む。)
二 法人税法第七十五条第七項(同法第七十五条の二第八項及び第十項(同法第百四十四条の八において準用する場合を含む。)において準用する場合、同法第八十一条の二十三第二項並びに第八十一条の二十四第三項及び第六項において準用する場合並びに同法第百四十四条の七において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)及び地方法人税法第十九条第五項において準用する法人税法第七十五条第七項
三 相続税法第五十一条の二第一項第二号、第五十二条第四項並びに第五十三条第一項、第四項第一号及び第二号イ、第六項並びに第七項
四 第七十条の七の二第十四項第十号ロ(第七十条の七の四第十一項において準用する場合を含む。)
2 前項に規定する特例基準割合とは、各年の前々年の十月から前年の九月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行つた貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を十二で除して計算した割合(当該割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として各年の前年の十二月十五日までに財務大臣が告示する割合に、年一パーセントの割合を加算した割合をいう。

(略)

(延滞税の割合の特例)
第九十四条 国税通則法第六十条第二項及び相続税法第五十一条の二第一項第三号に規定する延滞税の年十四・六パーセントの割合及び年七・三パーセントの割合は、これらの規定にかかわらず、各年の特例基準割合が年七・三パーセントの割合に満たない場合には、その年(次項において「特例基準割合適用年」という。)中においては、年十四・六パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年七・三パーセントの割合を加算した割合とし、年七・三パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年一パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年七・三パーセントの割合を超える場合には、年七・三パーセントの割合)とする。

(略)

法文は引用のため、加工するわけにいかない(今回はあまり略す場所がない。)のですが条文が長すぎです。

もう少し簡潔になると誰でも読む気になると思うのですが、色々な例外を漏らさず文章に起こすとこのような長い条文なるのでしょうね。

 

法律は面倒です。

●まとめ
今日もマニアックな記事になってしまいました。

滞納しなければ良いだけなので、延滞税なんて需要は無いと思いますが、この業界、根拠法文を追いかける人は少なからずいるので、参考になれば幸いです。
 

重要なのは2点。

 ・今の延滞税(延滞金)の割合は、租税特別措置法により低い割合になっている

 ・令和3年からもう少し安くなる

 

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