最近、市場の潮目が大きく変わってきた原因のように思われます。
じっちゃまこと広瀬隆雄氏が先日、Youtube Liveで語った「マルチプルコントラクション」というキーワードがあります。
この「マルチプルコントラクション」が、現在の株安を引き起こしている状態の正体と思われます。
今日はそんな「マルチプルコントラクション」について、少し考えてみましょう。
マルチプルコントラクションとは
じっちゃまこと広瀬隆雄氏(@hirosetakao)がYoutubeLiveで語っていたマルチプルコントラクション。
理屈はシンプル。
「(市場全体の)PERが下がること」
を指します。
反対語は、「マルチプルエキスパンション」というようです。
以下のようなイメージです。
コロナウイルス感染症の蔓延から今までは、長期金利も限りなくゼロの中、低収益→高PER株が許容されてきました。
一方で、コロナワクチンの開発、普及、しかしながら業績回復はまだ見込めない現在、政策としては金利は低めに抑えているとはいえ、市場は「そろそろ金利が上がり一旦引き締めに入るのではないか」と思う投資家が増えてきたわけです。
すると、「これらのハイパーグロース株たる高PER株を持っていることがリスクではないか」という温度感から売りが集中する状況のようです。
広瀬氏はまた、「業績相場へ一足飛びに移行するのでは」というキーワードを言っていました。
業績相場に移行するとハイパーグロース株は売られ、EPSを中心に業績の良い銘柄が見直されるようになります。広瀬氏は「業績相場」と「マルチプルコントラクション」を使い分けていたため、現在の状態は「業績相場」に移行したことそのものではないと捉えるべきようです。
個人的には、「業績相場に移るまえの前の調整」のようなものをイメージしています。
事例
さて、事例として最近の特定の銘柄の株価の動きを元に考えてみましょう。
今回の「マルチプルコントラクション」では、ハイパーグロース株のような高PER銘柄が他の銘柄に近づく動きをすることが予想されます。
例えばテスラ(TSLA)。
1月に最高値を付けています。
EPS(2021予想) 2.21(4.11)
PER 405倍(217倍)
株価 895.9ドル
現在のS&P500のPERが40.47倍。
歴史的にも高めの水準ですが、テスラはさらに上を行きます。
ハイパーグロースがいかに評価されているかがわかる好例です。
仮に近い水準で再評価されるとしたら、若干高めにPER60倍としても、
EPS(2021予想) 2.21(4.11)
PER 60倍
株価 133ドル(246ドル)
という水準(ここまで調整が入るほど悲観的ではないと思いますが)になるわけです。
なお、現在(2021.3.26)、テスラの株価は618.71ドルです。
マルチプルコントラクションの対応を考える
PER評価の底が抜けたかのような振る舞いをする「マルチプルコントラクション」、どのように対策を練ったら良いかを考えてみましょう。
キャッシュで持つ
PERが圧縮される時期ならば、「無理に株式を持たないほうが良い時期」と考えます。
これは、「利益(EPS)に関係なく株価が下がる状態」といえます。
広瀬氏は、90年代の日本の株式市場で株式を例に挙げています。
バブル期では日本株のPERが80倍くらいになっていました。
現在の日本の株式のPERは23倍程度です。
「下がった今が割安だ、押し目買い!」
とマルチプルコントラクションの影響で下がった株式を買い増した人の末路は、当時投資をしていなかった我々でも想像に易いと思われます。
現在は、EPSが若干伸びたとしてもPERがそれを食いつぶしていくため、株式で持つには相応のリスクを生じると考えられます。
そのため、一旦キャッシュで保持する価値があるといえます。
元々低PERの銘柄を持つ
一方、平均PERよりさらに低PERの銘柄はどうでしょうか。
例えば保険会社のアンセム(ANTM)などがいい例です。
EPS(予想値) 22.48(24.81)
PER 16.5倍(14.96倍)
株価 371.31ドル
S&P500のPERを再掲。
長い歴史てみると、S&P500のPERは20倍行けば高いレベルのようです。
マルチプルコントラクションの理屈で行けば、アンセムの下げの影響は限定的であると予想されます。
むしろ上がることすら考えられる内容といえます。
その影響か、1月までパッとしなかったアンセムの株価はためらわず上昇を続けているように思います。(なお、バリュー株であるかを差し引いても業績が底堅い企業です。)
そのため、どうしても持つならばバリュー株という選択肢はアリかと思います。
まとめ
後付け経済学ですが、昨年の年末辺りから時流が変化してきました。
輝かしい将来を語る「テーマ株」が思った以上に伸びなくなってきていました。
それでも1月くらいまではSPACや小型株にお金が集まり爆発的な成長をしてきましたが、それすら2月に入り減速気味。
あわせて長期金利の急速上昇、それに伴う急落と回復、ワクチン流通によるコロナ後の世界の展望。
「業績相場」への足音が聞こえてきているのかもしれません。
コメント
[…] マルチプルコントラクションの個人的な見解については、過去の記事を参考にしてください。 […]
ハイテク株が下落し、1000万円ほど損をしてしまいました。もうギブアップ寸前です。
この状況の中で、日本株はトレードの難しい時期が続きますので、これを回避すべく次のファンド
を検討しています。いかがでしょうか。
香港市場のETF 銘柄コード「03087」
構成する会社 すべてベトナムの企業
参考 *「中国市場は外国投資家が戻ってきており、グラフのとおり
急な投資額となっている。長期投資も検討。」との解説。
(東テレ モ-サテ 6/1より)
* ベトナムの株価は最近特に急上昇しており、下記のメリット。
若い国(年代別人員構成)、一人当りGDPがアセアン
の中でも低く上昇代がある、TPPの恩恵が最も受けや
すい、米中摩擦で企業が中国からベトナムへ
(google検索 ベトナム株投資 SBIより)
*べトナム国内の取引場では、個別株を購入する場合、手
数料が高い・外国人には企業ごとの株数に制限等の問題が
あるが、このETFですべて解消。
コメントありがとうございます。
当方、ETFはあまり詳しくないのですが、調べてみました。
香港 db x-トラッカーズ FTSE ベトナム・インデックス(3087)について。
組み入れ銘柄数は20程度、時価総額が大きいの銘柄が多く、チャートを追う限りVNインデックスと概ね同じ動きで推移しているようですね。
そこでベトナムの国全体の状況から今後の動きを予想してみようと思います。
●名目GDPの成長について。
2011年 1,517USD→2020年 2,777USD(引用:JETRO)
と国全体で年平均6.9%の成長をしています。(なお、2019年の日本は40,847USD JETRO)
●生産者人口について
コメントの通り、人口ピラミッドから見てもベトナムは有利です。
生産人口は多く、中国より10年~15年くらい先まで成長を期待できると思います。
●リスクについて
一方でベトナム株、特に国全体に投資を行うならば「長期投資」を目指す必要があります。
下手すると5年くらい成果が出ないかもしれません。
あとは若干の暴落リスク。
https://jp.investing.com/indices/vn-chart
上のVNインデックスのチャートを見てもらうとわかる通り、私が投資する以前、ベトナム株投資のバブル期がありました。
当時2007.2頃の最高点から急落し、2018.3までその最高点を超えることができませんでした。
今回は、GDPが10年で2倍くらいになったため実需も伴う株価上昇のため、過去のような暴落の可能性は少ないかもしれませんが、じっと我慢の時期を迎える可能性は否定できません。
ハイテク株を避けるにしても、インデックスならば米国株を保有する(例えば $QQQ や $VTI等)の方が、高い運用成果を挙げることができるかもしれません。
最後に、一応投資判断になるかもしれないので、「投資は自己責任で」お願いいたします。