住んでいない市役所から市民税の通知が届いた?(想定される3つのケース)

リュウです。

今日は、ドアノブの修理と親の使うソフトの更新の手伝いをします。
コロナウイルスで外に出かけるのも落ち着かない日々ですが、地道に乗り越えていきましょう。

先日の記事は一部で反響があった反面、加筆と修正が必要となったので一応再度リンクを貼っておきます。
コロナのせいで申告期限延長(影響がありそうなもの)

 

修正箇所

①証明書の交付の問題の加筆

②申告期限がない→申告期限はあるが、恐らく延長されるかノーペナルティと予想

さて、今日の本題。
ある方から聞かれたのですが、

「自分が住んでいない市町村から住民税の通知(住民税の申告書)が届いたのですが、何かの間違いですよね?」

という質問がありました。

これは、税理士試験住民税の受験者としてお答えしましょう。
(受験者数は簿記論の約30分の1、財務諸表論の約20分の1程度の需要の少ない超レア科目ですが・・・)

これには、課税が誤っている可能性も全くゼロではないですが、3つのいずれかの理由が原因であることがほとんどです。
 

今日は、「覚えのない自治体から届いた住民税の通知の謎」について。

※国や市町村の請求には何らかの根拠があります。

 国や市町村にどういう条件で課税されたか、まず確認。

●もくじ
1 その市町村に住んでいないのに市民税の請求がきた
2 住民票の住所地以外から住民税が発生する3つの理由
(1)家屋敷課税のケース
(2)居住実態に対し課税されるケース
(3)1月2日以降に引っ越したケース
3 資料

1 その市町村に住んでいないのに市民税の請求がきた
ある方から聞かれた話の詳細。(※自治体名は異なります。)

「自分の住民票が鎌倉市にあるのに、

 横須賀市役所から市民税の請求が来ました。
これって無視していいよね?」

という質問です。

上述の通り、実は、「住民票のない市町村から、個人の住民税の請求が来る正当な理由が3つ」あるのです。

 

次の項目で解説していきましょう。
 

 

2 住民票の住所地以外から住民税が発生する3つの理由
住民税は、原則的には住民票(住民基本台帳)がある自治体(すなわち住所地)の市町村から課されます。
(地方税法294条1項1号)

ところが特定の場合に例外があり、住所地の市町村以外に課税権が発生することがあります。

例外となる3つの理由は、「2つの例外的なケース」「1つの認識の違い」に分類されます。
それぞれの事情を調べていきましょう。

(1)家屋敷課税のケース(地方税法294条1項2号)
例外的なケースその1、通称「家屋敷課税」と呼ばれるものです。
もしかしたら、課税(又は申告書を送付)されたあなたは、別荘や事務所を持っていたりしませんか。

①家屋敷課税とは

地方税法によると、事業所・事務所、家屋敷を持っていて、その市町村内に「住んでいない方」は、その市町村で住民税の均等割が発生します。
「住んでいない方」とするのは、住んでいれば通常通りの課税(地方税法294条1項1号)になるためです。

 

会計畑の方は、似た課税方法として、法人住民税が身近かもしれません。

「法人の保養所などに対し、法人住民税の均等割(状況により法人税割)が課される」の個人住民税バージョンのようなもの。

 

なお、均等割非課税(住民税非課税?)の所得の方は課税されないようです。

(法令を読む限り「均等割」を課する規定なので均等割が非課税なら課税されないはず。)

均等割の非課税については、103万円の壁の手前にある壁(住民税の非課税)の記事を参考にしてください。

具体的な抽出方法は不明ですが、「固定資産税の情報と連動している」と思われます。

 

課税される事業所、事務所等の定義等については細かい例外規定もあり、本筋と外れる固定資産税の話も絡んできて、冗長になるので今回は割愛します。

②税額
家屋敷課税については自治体によりますが、市県民税の均等割のみのため、復興税込みで合計で5,000円程度(神奈川県だと5,300円の市町村が多いです。)になります。

上記は、道府県民税にも同様の規定があり、同じ住所地が県内だとしても、家屋敷課税にかかる県民税はそれぞれの自治体の両方で徴収されます。(例:神奈川県横須賀市の不動産を保有し、住所は神奈川県鎌倉市でも神奈川県の県民税均等割が両方に発生する。)
(地方税法24条1項1号、2号で、住所地と家屋敷に個別規定あり)

この規定が制定された背景としては、家を持っている人も住民でなくても住民サービスを受けている、という解釈に基づくのだと思われます。
相続などで、被相続人の家を相続した翌年度に届いて疑問に思う方が多そうな案件ですね。

(2)居住実態に対し課税されるケース
例外的なケースその2、「実際は住所地以外に住んでると判断し、課税されている」です。

市町村がどのように判定しているかは不明ですが、例えば、源泉徴収票の住所が住所地と違っていたりしませんか?

①居住実態に対する課税
上述の通り、原則、住民票のある自治体に住民税は課されます。
しかし、どう見ても自分の市町村に居住実態があると判断した自治体さんが、「うちが課税します」と、住所地にの自治体に対し意思表示をしたうえで課税をすることがあります。

なお、二重課税にならないよう、住所地の自治体に通知をすることもそれぞれ義務付けられているようです。
(地方税法294条3項、4項)

②税額
こちらは、課税する自治体が変わっただけなので、所得割(所得に応じてかかる)と均等割(固定金額)の両方が課されます。

万一、住所地と実態のある場所(居所)の市町村の両方に課税されていたら((1)の家屋敷課税を除く)、住所地の自治体の課税に誤りがある可能性が高いです。

(3)1月2日以降に引っ越したケース(地方税法318条)
最後に、認識の違いのケース。
納付書が届く年の「1月2日以降に引っ越し」をしたりしていませんでしょうか。

①住民税の賦課期日(課税対象と認定する日)とは
地方税法318条によると、住民税の課税の賦課期日はその年の1月1日となっています。
先ほどのケースであてはめると、2020(令和2)年1月10日に横須賀市から鎌倉市に引っ越してきたというようなケース。

この場合、2020(令和2)年度の住民税は横須賀市に課税されます。

②自治体国保との違い
紛らわしいのが、「自治体国保(月末に住所を置いている自治体で課税)との比較」です。
時々勘違いされる方がいますが、国保とは異なり、住民税は「1月1日にいる市町村が総取りする」仕組みになっていて、年度途中の引っ越しに影響されません。

③税額

住民票が1月1日にあった自治体に所得割と均等割の両方が課されます。

もちろん引越し先には課されません。

 

給与や年金から天引きされているとどこから課税されているかの実感がなく、さらに、税額そのものも変わらないので気づかない人も多いかも。
1月1日の状況を見るため、住民票の手続を正当にしていれば二重課税になることはありえません。

 

3 資料

参考資料を貼っておきます。
●地方税法(抄)
(市町村民税の納税義務者等)
第二百九十四条 市町村民税は、第一号の者に対しては均等割額及び所得割額の合算額によつて、第三号の者に対しては均等割額及び法人税割額の合算額によつて、第二号及び第四号の者に対しては均等割額によつて、第五号の者に対しては法人税割額によつて課する。
一 市町村内に住所を有する個人
二 市町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で当該市町村内に住所を有しない者
(略)
2 前項第一号の市町村内に住所を有する個人とは、住民基本台帳法の適用を受ける者については、当該市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう。
3 市町村は、当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には、その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして、その者に市町村民税を課することができる。この場合において、市町村長は、その者が他の市町村の住民基本台帳に記録されていることを知つたときは、その旨を当該他の市町村の長に通知しなければならない。
4 前項の規定により市町村民税を課された者に対しては、その者が記録されている住民基本台帳に係る市町村は、第二項の規定にかかわらず、市町村民税を課することができない。
(略)

(個人の市町村民税の賦課期日)
第三百十八条 個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

●まとめ
今日は、「住んでいない自治体から届く住民税の通知」について解説しました。
想定される事例は大きく3つ。

 ①別荘などを持っているため均等割が課されるケース(家屋敷課税)
②居住実態が住所地以外にあるため所得割・均等割が課されるケース
③1月1日に別の住所にいたケース(賦課期日に済んでいた住所が違う。)

税理士試験の住民税では、
 

 ・家屋敷課税は理論に出る
・居所地での課税は、やや理論よりですが試験では理論・計算ともに出しにくそう
・1月1日の住所地については計算(どこの市に課税されるか回答欄で書いたような?)に出る

で出てくる可能性があります。
(ですが、かなりマイナーな論点なのは否めません。)

国税と違って、どこの市町村に課されるものなのかが住民税では重要です。

二重に課税されていないか不思議に思ったら、その市町村に連絡を取ってみるのもひとつかと思います。

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