【国徴法小話5】差押えの財産区分が変化する!? 自動車の差押え

税金の話

昨日はボーナスだったため、妻と娘と外食に行ってきました。
娘に「今日も食べに行くの?」と、聞かれました。
流石に毎日外食はしないと伝えると悲しそうにしていました。

今日は、雨が降らない時間帯を見計らって娘と公園にいってきます。

●今日の娘
最近、負けず嫌いを発揮してきます。

わたしが歯を磨こうとすると、走ってハブラシを取りにいき磨いた後、

「わたしが先に終わったよ!
 パパ、遅いね!!」

と言うようになりました。
負けず嫌いはいいことです。

さて、本題へ。

違った角度で国税徴収法を考えるテーマ。
「細かすぎて伝わらない国税徴収法」といったところ。

今日も懲りずにマイナーネタに触れてみましょう。
「自動車の差押えの話」を中心に書きました。

自動車は、個人で持つとそこそこの価値を持つ財産です。
今では軽自動車が人気で低燃費、低維持費などを謳い、200万円位するものもあります。

そんな自動車、軽自動車の国税徴収法の差押財産としての取り扱いについて考えてみましょう。

いつもどおり、帰りの電車の読みものかコーヒーブレイクにでもどうぞ。

軽自動車は「動産」です!

差押財産の種類

まずは前知識の整理。

国税徴収法に基づいて行う差し押さえ、財産により方法が異なります。
そのため、試験対策では(つまり国税徴収法の法文上)財産を7つに分けて、差押えの方法を規定しています。

●7つの財産分類

 ①動産又は有価証券(※)
 ②債権
 ③不動産
 ④船舶又は航空機
 ⑤自動車、建設機械又は小型船舶
 ⑥第三債務者等のない無体財産権等
 ⑦第三債務者等のある無体財産権等

(※受験生には釈迦に説法ですが、国税徴収法の有価証券、
  簿記論をはじめとした他の税目の「有価証券」と若干異なります。
  イメージとしては金券・プリペイドカード)

個人的に、差押えの方法が似ているもので整理すると、以下の3タイプ

 A 動産型(実物を占有して成立するタイプ)
 B 債権型(第三債務者等に通知することで成立するタイプ)
 C 不動産型(差押えに登録を必要とするタイプ 国徴法68条準用)

にも分類できそうです。

若干、無体財産権等は分類しにくいですが、7つの財産を3タイプに分けると、

 A動産型  ①・一部⑤(後述、自動車の取り扱いの一部)
 B債権型  ②・概ね⑦(出資金・電話加入権(売れるのか?)など) 
 C不動産型 ③・④・⑤・⑥・一部⑦

となる。

これらを前提にして、自動車の差押えについて考えましょう。

自動車の差し押さえ

さて、前提を話したところでメインテーマへ。
自動車を差押える上でのポイントを整理。

区分と手続

自動車の差押えなのですが、区分としては7つの区分によると、通常、「⑤自動車、建設機械又は小型船舶」になります。

したがって、不動産型(71条1項により68条1項~4項準用)として、関係機関に差押えの登録(自動車は「登記」とは言わないと思う。)を嘱託する必要があります。(登録は車検と同じなので、管轄する陸運局で良いはず。)

理論の柱立てとしては、

 ・本人及び差押書の送付と関係機関(陸運局)に登録の嘱託
 ・監守保護処分(勝手に乗らないように税務署で監視)
 ・占有(売るために占有する必要がある)
 ・運行許可(不動産型なので原則OK、価値を下げる場合はNG)
 ・車検証や自動車のキーの取り上げ(動産の差押えを準用)

となります。
厳密な法文は、3年前に暗記した私より理論暗記している方々のほうが詳しいので、理論マスター・理論サブノートを参考ください。

では、次に特殊な自動車について。

軽自動車

軽自動車は、自動車に分類されそうですが「①動産」です。
根拠は基本通達にあります(基本通達71-1)。

●基本通達71-1
(略)「登録を受けた自動車」とは、軽自動車(略)以外の自動車で、道路運送車両法第2章《自動車の登録》の規定により、国土交通大臣が管理する自動車登録ファイルに登録を受けたもの(略)

したがって、差押えの手順は上述でいう不動産型ではなく、「動産型(実物を占有して成立するタイプ)」となります。

細かくは、動産と自動車の理論を読んでもらえればわかるとおりですが、

普通自動車は「登録(+本人への通知)」、
軽自動車は、原則「占有(例外として保管&差押えの表示)」

を行うという違いがあります。

軽自動車と自動車の取り扱いに違いを作った理由はわからずじまいでした。

恐らく、軽自動車は陸運局(国土交通大臣)が登録先ではないから(確か、4輪は軽自動車協会でいいはず。)なのかと思います。

所有権留保(滞納者が分割払い中などのケース)

これも直前期で見た気がします。

ファイナンス会社などで分割払い中の自動車は、「差押できません」
(受験したH29に模試レベルで出題されていたような気がする・・・。)

②より理由は明確。

所有権留保中の車両は、「本人名義ではない(ファイナンス会社所有)」からです。滞納者のものではないので、当然、仮に軽自動車でも不可能。

なお、分割払いを完済しても所有権留保を解除しない人もいるようで、この場合も差押できません。
(ここは引っ掛けで出題されそう。
 「滞納者は、本件自動車の分割払いを終了しているが、所有権留保の解除手続を行っていない。」など。)

似たようなもので、リース中の自動車も本人名義でないため差押できません。
これらは、わかりづらさを避け「本人名義ではない」と注記されると思いますので難易度は低め。

車検切れ

車検切れになった車両は「財産の種別が変更」されます。

国税徴収法71条に、

71条 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(略)

とあります。
前述の通り、「登録を受けた自動車」は、道路運送車両法に規定される自動車登録ファイルに登録を受けたもの、「自動車検査証(車検証)」の有効期間に限られます。

したがって、車検が切れると差押えの区分上は「自動車」から「動産」となります。当然、差押え方法も「不動産型」から「動産型」に。

このように、差押えて日数が経つと財産の種類が変更されます。

公道を走れない車に価値があるのか、という疑問がありますが、高級車ならば車検切れで道路を走れなくてもパーツ取りに使えるんでしょうから、意外と売れるのかもしれません。

動産化する前に差押えた自動車への対応は?

さて、自動車で差押えたが、車検切れで動産になってしまった。
これをどうやって滞納処分をするのか・・・。

調べてみたものの、法・政令・規則、通達にも載ってなさそうです。
(探し方が甘いのかも?)

ただ、原理原則に立ち戻ってみましょう。

差押えた「自動車」は既に存在しませんので、

 ①自動車(、建設機械又は小型船舶)差押えを解除
 (自動車としての価値はゼロ。無益な差し押さえ 79条1項2号)。

と考えれば良いかと思います。
そして、

 ②動産(又は有価証券)として再度差し押さえ

を行います。

あとは、動産と同じ理論で。
そんなに複雑に考える必要は無さそうです。

まとめ

結局そこそこの長さになってしまった。
若干特殊な扱いをしそうな自動車の差押で重要なのは3点。

 ・軽自動車は動産
 ・所有権留保(返済中)の自動車は他人名義、差押え不可(リースも同様)
 ・差押えた自動車が車検切れになったら、動産として差押える

他にも、通達のページを見ていたら、
「共有していたら占有できない(民法第249条を参照)(基通71-19)」などのルールもあるようですね。

仮に応用論点で出ても、ロジックさえわかれば既存理論をつなげる形で十分解答できると思います。

最後に、これら応用論点は、余力があれば基本通達を素通しすればいくらでも面白い論点がありますが、受験生は理論の暗記で手一杯な時期。基礎理論をじっくりかためれば合格点は十分取れます。

今年の税理士試験まであと2ヶ月くらい。
無事に受かることを祈っております。

法文等

●国税徴収法(抄)

第71条 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(以下「自動車」という。)、建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の規定により登記を受けた建設機械(以下「建設機械」という。)又は小型船舶の登録等に関する法律(平成十三年法律第百二号)の規定により登録を受けた小型船舶(以下「小型船舶」という。)の差押えについては、第68条第1項から第4項まで(不動産の差押えの手続及び効力発生時期)の規定を準用する。
(略)

●国税徴収法基本通達(抄)

第71条関係 自動車、建設機械又は小型船舶の差押え
(登録を受けた自動車)
1 法第71条第1項の「登録を受けた自動車」とは、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車以外の自動車で、道路運送車両法第2章《自動車の登録》の規定により、国土交通大臣が管理する自動車登録ファイルに登録を受けたもの(自動車抵当法第2条ただし書に規定する大型特殊自動車で、建設機械抵当法第2条に規定する建設機械であるものを除く(道路運送車両法第5条第2項)。以下「自動車」という。)をいう。

●道路運送車両法(抄)

第二章 自動車の登録等
(登録の一般的効力)
第4条 自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。以下第29条から第32条までを除き本章において同じ。)は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。

(以下、車検証の話なども含め、略)

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