老後2,000万円問題は問題ではない

ファイナンシャル・プランニング

リュウです。

※若干クールダウンしたので、タイトルを直しました。

今日はフリーです。
大雨なので、会議室のネット環境の整備のため準備をしています。
ルータのポートの穴あけがうまくいってないので試行錯誤して行きます。

さて、本題。
「老後資金に2,000万円必要」というテーマが話題になっていますね。
個人的には、どこが問題発言なのか全くもって分かりません。

思うに、根拠となった文書を読んで理解した上で、ファイナンシャルプランナーが「死ぬまでに6000万円必要」と説明するのは問題が無くて、政府が「老後に2000万必要」というと問題発言というのは、奇妙な話なもんです。

今まで(明治以前から令和まで)に、国(政府)が老後資金ゼロで生活できるような仕組みを組上げたことはありません。

過去記事、【実は老後より老後になるまでの資金の方が大変(老後に必要な資金の試算をガチでしてみて思うこと)】で書いたとおり、私は、夫婦で生活するならば、運用を前提として最低限生活で920万円、ゆとりある生活を見込んで2200万円必要と見積りました。

これは不適切発言でしょうかね。 

政府は、立法できるからもっと年金を増やせといいたいのでしょうか。
どこからお金を出せるのでしょうか。
我々の税金です。(今の人を助けるための赤字国債は、子や孫の首を絞めます)

野党やマスコミは、現在より良い年金制度を提案するわけでもなく、国民の老後の不安を煽るだけです。こんな現状に疑問を抱き、今日は記事を書こうかと思います。

今日は、「『老後2,000万円』問題」を考えてみましょう。


※JR東日本・陸羽東線 瀬見温泉駅(2016.10 山形県最上町)
 前にも書きましたが、お金が少なくても良い旅行はできます。
 旅をすると心が癒されます。

「老後2,000万円」の問題を整理(そもそも問題あるの?)

老後に2,000万円必要である。

とある報告書(後述)で書かれた内容ですが、これを政府批判の内容に使っている方がいるようです。

このテーマで批判する人は、大体以下のとおり文句をつけます。

年金制度は破綻している、政府は何をしている。
酷い質問だと麻生議員の年金の額なんてプライベートの話を聞いて答えないことに文句をつける悪質な国会議員すらいる。
(どの議員でも(議員じゃなくたって)、自分の年金の額を知っててもインタビューで答えたくはないだろ、と。)

年金問題をもとに偉そうに政府批判する野党議員、マスコミ。(ある方のブログでは、インタビューを受けたが政府批判じゃないから記事が採用されなかった。という内容もありました)
そして我々日本国民は、良い様に問題をすりかえてダマされてるわけです。

文句をつける方々に、共通して思う疑問。

ソースとなった金融庁の資料を読んでいる人はどれくらいいるだろうか。

読んでみると分かりますが、中身は実は当たり前のことを当たり前に書いただけの資料で単なる現状把握です。野党議員らが煽る要素は全くなく、特に新しい発見は無いと思います。

この記事を基に年金制度批判をしていると言う人の99%は、恐らく意図的に曲解して政府批判をする人か、資料そのものを読んでない人だと思量します。

さて、ここまで読まずに批判した人を逆批判したところでソースとなった報告書の説明をしましょう。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」のようです。

論文同様、批判をする人はまず原文を読むべきだと思います。
批判の論点から察するに、実際には文句をつける9割の人は読んでいませんね。

実際に報告書を読んでみましょう。

肝心の2,000万円はどこにかかれているかを見ていくと、どうやら、「1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」の「(2)収入・支出の状況」、及び「(3)金融資産の保有状況 (P8~20)」に基づいているようです。

これだけ書いても読まない人も多いと思うので、P8~P20の概要を整理します。

① 30~50代の収入は、かつての同年代より減ってきている(要は今の高齢者の方が年収が多かった。世代間格差。)

② 60代になると年収が2~3割減ってしまう
 (退職、継続しても再雇用するから当たり前。)
 【ここで、収入より支出が5万円多いという話が出る。つまり、年金に限らない。

  安月給の企業も原因なのですがマスコミは企業を批判することはない。】

③ 日本の高齢者は元気である。
  諸外国に比し、65~69歳のインターネット利用率も高く、働く人も多い。
 (しいて言えばここが批判できるかもね。70まで働かないとダメなの?と。)

④ 若年層を中心に働き方が変わり、年功序列で定年まで働かないスタイルになり、
  老後の柱の退職金が少なくなる。
 (これは、氷河期世代をいじめるときの印籠「自己責任」又は「企業の搾取」。)

⑤ (④が原因と言ってはいないが)退職金がピーク時から2~3割減っている。
  雇用の流動化により今後も続くだろう(これも世代間格差の話)

⑥ シニア層は若者に比べ金融資産を多く持っている。
  若者は住宅ローンなどの負債を負っている人が多い。
 (給与も退職金も多かったから高齢者は金を持っている。世代間格差。)
 【ここで、月5万の不足を金融資産で補わないと生活困難になる】という話が出る。

⑦ だから、老後を考えて金融資産を準備しとかないと大変だよね。
 (そりゃそうだ。反論の余地なし。)

という流れ。

もっと要約すると、「働き方が変わったので、今の老人の頃出てた給与ももらえない、そのため貯蓄も出来ない。だから不足分の月5万円蓄財しよう。」

だよね、終わり。くらいの内容にしか思えない。
政府のどこに問題があるのだろう。

仮に、サラリーマンが問題提起をするならば、

①「給与と退職金を減らした企業」の所為で、69まで働かなければならないこと。
 (「企業」の労働力の搾取が問題、給料上げろ。)
②高齢者が日本の財を独り占めした所為で、若者は割を食っていること。

 (「年寄り」だけ得して許せない、年金減らせ。:世代格差)

を問題にすべきでしょう。

したがって、もしマスコミが批判したければ、

昔は、給与も、退職金も、年金もいっぱいお金をもらえてよかった。
文句を言うべきは高齢者びいきの政策、世代間格差だ。とすべきでしょう。

こういうのって、労働者の味方と主張する民主系や共産系が企業側に圧力かけないんですかね。「給料上げなきゃダメだよ。」と。

なお、2000万の計算式は、不足分を月額5万として、

5万×12月=60万(年間)
60万×20年=1,200万(80歳まで生きる)
60万×30年=1,800万(90歳まで生きる)

→ 「人生100年時代だから、93歳まで計算すると2,000万は要る」

ということを根拠としています。

これもお粗末なもので、そこには平均余命(平均寿命じゃないよ。)すら考慮されていない単なる概算です。
(資料の最初に平均余命を引用しているのだから、それを基本に計算すべきだと思います。)

「年金は100年大丈夫はどうなった」という的はずれな文句を言う方もいますが、あれは、「制度が100年もつ」というだけで、人生100年とまったく無関係です。

(※とはいえ、当方も「年金は100年もつ」制度かどうかというと疑問であるのは変わりませんが、この報告書の資料で批判するのは筋違いです。)

もしかして、年金だけで生活できると思ってたの?

元々年金だけで生活はできません

結論だけでいうと、昔から年金だけで暮らせません。
年金がなかった時代は、さらに老後生活を「自己責任」とされていました。
(「自己責任・・・。」他の世代が、氷河期世代に浴びせまくった言葉です。
 自分のときは「自己責任」と言われたくないとかナシですよ。)

今の方が相当手厚いのです。

年金制度が構築されてきたあとも、老後資金は必要と言われています。
生命保険や個人年金などで資産形成しているのはここ50年(ひょっとしたら100年以上)変わってないのではないでしょうか。
(これら生命保険で年金を準備する仕組みには疑問ですがここでは触れません。)

年金の額が少ないのではなく、積み立てた額が少ないだけ

有利な付加保険料とか、給与が可変する厚生年金とかありますが、モデルケースとして国民年金1号でどれくらいの投資でどれくらいのリターンをもらっているか整理しましょう。
国民年金の今年度の月額が16,410円(今年度の支給額とあわせるため、今年の保険料)です。

① 積立額

厳密に支払と給付の時期を一致させることは不可能なので、
今年の保険料を積み立て、今年の給付額を受けることとして試算しましょう。

積立額(40年:480月)
16,410円 × 12ヶ月 × 40年(20~59歳) = 7,876,800円(原資)

② 支給額

積み立てた国民年金保険料を運用し、不足分を国が支払うことで年金が支給されます。
国民年金1号の場合、満額で年額781,000円、死ぬまで受給できます。

平均余命は、こちらの資料を参考にしました。(H28年)

 男 19.55年
 女 24.38年

③ 支給額

 ① × ②
 男 781,000円 × 19.55 = 15,268,550円
 女 781,000円 × 24.38 = 19,040,780円

④ 国がいくら負担しているか
 ③ - ①
 男 15,268,550円 - 7,876,800円 =  7,391,750円(給付見込額・男性)
 女 19,040,780円 - 7,876,800円 = 11,163,980円(給付見込額・女性)

 

本当は、年金は運用益を考慮するのですが、金利ゼロ時代なんだから運用益がでないものとします。
(なお、個人的には自力運用した方が儲かるので、プールしたくない・・・・と思うのですがそれは別の話。)

我々はお金をプールするだけで、60歳時の平均余命まで見込んで給付を受ければ、倍額から2.5倍にしてもらえるわけです。

これが長生きにより、上述、人生100年時代の死亡予定年齢の93歳まで支給されるなら、さらに10~15年分、したがってこの基礎年金だけで900万~1400万円も支給されるようになっています。

こんな有利な商品は、民間の事業(生命保険?)では存在しないと思うのですが、いかがでしょうか。(もし、公的年金が民営化されたら保険料が数倍になるか、支給額が数分の1になるかするでしょう。)

「日本の年金はかなり手厚い」という真実

金利が0%の時代のため、ただ預けているだけではお金は増えません。

お金を借りる方(住宅ローン、事業用資金)で金利0%を喜ぶ方は少なくないですが、本来は健全な状態じゃありません。(マイナス金利はもってのほか)

金利が0%というのは、簡単にいうと「預けていても、資産が増えない状態」です。
年金のあてはめると、我々が年金に資金をプールしていてもお金は増えない(増えづらい)わけです。

40年間100万円を積み立てても、金利がゼロなら40年後100万円にしかなりません。
運用会社が手数料を取ったら、100万円が90万円に目減りしているかもしれません。

したがって、報告書がいいたかったことは、「こんな時代がまだまだ続きそうだから、自力で運用できるよう動くべきだよ。」と言っただけです。

金融庁は何か悪いことをいったのでしょうか。

むしろ、金融庁が、「年金だけで生活できるから安心して。蓄財しなくていいよ。」なんて書こうものなら、30年後には老後資金がなくて苦しむ国民が多数出ることになるでしょう。

生活保護を受けるなど考える人が増え、その資金が尽きれば支給額が減るでしょうし、増税で対処するようになるでしょう。

まとめ

1~3により、年金支給はあくまで補助として、「老後資金は当然に準備すべきもの」ということを説明してきました。

「老後2,000万円問題」は、政府の問題ではなく、我々の問題です。

政府の所為にして、寝ていれば政府が解決してくれるなんて時代は、古来よりこの国では存在しません。
氷河期世代をいじめ論破する言葉で言うなら「自己責任」です(さすがにしつこいか。)

思うに、我々は本来我々自身が選んだはずの政治家や、我々視聴者から(スポンサーに金を落とすことで)お金をもらっているマスコミに「試されている」ように思います。

「老後2,000万円要るんだぞ、政府は何をやっている」と彼らがはやし立てても、「筋違いだろ、何を言ってるの?」冷静な対応をできる人になりたいものです。

冷静な対応をできるようになれば、政治家やマスコミも、内容の無いことで政府批判をすることがなくなるでしょうし、質の高い情報を提供するようになると思います。

少し考えれば分かることを、資料も読まないで「政府は何をしているんだ」と考えてしまった方は要注意です。

個人的には、このような扇動を受けないために、「小学校や中学校でダンスやプログラムなどを教えるよりも、資産運用ができるようにマネーリテラシーをもたせる授業をすべき」だと思います。

そんな教育政策は組まれないと思います。
きっと、国民はある程度ダマされてくれないと都合が悪いこともあるのです。

今後、子どもたちのマネーリテラシーを育てるためのセミナーを開けたら良いですね。
とてもやるせない思いをしたので記事に起こしました。

※2020.5.16 レイアウトを修正

関連記事

—–

コメント

タイトルとURLをコピーしました