株式の長期保有と税金について

税金の話

確定申告期が終わり・・・

確定申告期も終わりに近づきました。

確定申告を自分で行う方は、年間の損益をはっきりと自覚できる時期だと思います。

さて、今日は例年より1カ月遅めではありますが、確定申告の時期でもあるので確定申告と税金の話でもしようと思います。

「税金は出来る限り支払わず済ましたい。」

事業主なら、銀行の「融資のためにしっかり利益を出す」とか、「上場を目指す」とか個別の事情などもあるのですが、投資家の方々なら概ね思うところと思います。

では「税金が投資の成績に与える影響はどの程度か」を実際に比較してみましょう。

特に「源泉徴収の有無」と「短期売買と長期売買」の観点で考えてみます。

長く乗るか、短く乗るかを税金面から考えてみる。

検証

前提条件に基づき、シミュレーションしていきましょう。
資産は、5%で100万円の利益を出せる2000万円とします。

 ①運用成績は年5%(効果を比較しやすくするため若干高め)
 ②税率は20%(復興税は複雑にするだけなので省略。)
 ③投資した直後に5%利益が出て、すぐ売却そしてそれ以外期間は投資しない
  (実際はあり得ませんが、源泉徴収との比較をしたいため。)

という前提条件に基づき、

 ●毎年売却するケース(源泉徴収あり)
 ●毎年売却するケース(源泉徴収なし)
 ●10年間(売却しない)

を比較してみたいと思います。

毎年売却するケース(源泉徴収あり)

「源泉徴収あり」とした場合、売った瞬間にキャピタルゲインの20%(現行法の場合厳密には20.315%)を税金で差し引かれます。

10年間で+48.02%となります。
年平均で4.0%(5%の利回りに対し20%税引き後なので。)
税効果は20%(1-4.0%/5.0%)です。

したがって、税金により5%ー4%=「1%」の利回りを削っていることとなります。

毎年売却するケース(源泉徴収なし)

ご存じの方も多いですが、「特定口座や一般口座でも、キャピタルゲインから税金を引かない方法」を取れます。
源泉徴収なしの場合は、原則的に「確定申告が義務付け」られますが、「税引きされないため、最大1年3カ月くらい利益から運用できる期間が増え」ます。

そこで、源泉徴収をしないケースを想定。

モデルケースでは10年経過後の税引き額を想定。
公平に計算するために、11年目は税引き処理のみ。

10年間(+11年目の税引き)で+48.52%
年平均+4.03%と若干の上昇。
税効果は19.4%(1-4.03%/5%)
です。

税金による運用利回りは 5%—4.03%=0.97% となります。
税引きまでの期間が1年延びたため、その期間分の差が出ます。

なお、参考として10年目の税金の288,283円を活用して、11年目に運用した場合、運用益が+48.59%に上昇します。

10年間保有後に売却するケース

10年間保有した後売却した場合の運用成績。
どれくらい有利になるか。

結果10年で+50.31%となります。
年平均4.15%となり、税金によるパフォーマンス減は1%から0.85%まで減衰させられました。
税効果は約17%(1-4.15%/5.00%)となります。

(1)の毎年売却した場合と比べて、10年間の運用益が約2.3%(50.80%-48.02%)上昇します。

なお、運用利回りが上昇すると長期保有の税効果は良くなり、

 5% 年平均4.15%(税効果約17%)
 8% 年平均6.78%(税効果約15.2%)
 10% 年平均8.56%(税効果約14.4%)
 15% 年平均13.13%(税効果約12.5%)
 20% 年平均17.81%(税効果約10.9%)
 23% 年平均20.65%(税効果約10.3%)

となっていきます。

短期売買は損なのか

結果は当然、「売るより保有する方が税効果は少なく・・・」なるんだけど、「思ったほど効果は大きくないのでは?」という程度の違い。

1年保有と10年保有で比較した場合、年平均パフォーマンスは、年5%の運用で0.15%くらい(4.15%-4%)の違いです。
複利で年平均0.15%は大きいとみるか、小さいとみるかは考え方が意見が分かれると思います。

もっと大きな違いかと思っていたものの、5%程度の利回りだと10年間保有でもキャピタルゲイン税に対し劇的な効果を得るのは難しいようです。

都度、上がる銘柄を見つけられれば、頻繁に売り買いする方がデメリットが少ないように思います。

一方、利回りが上がっていけばいくほど、短期保有と長期保有のキャピタルゲイン税の差は大きくなっていきます。

優良銘柄の長期保有で財を成したバフェット氏は、好調な頃の運用利回りが年23%くらいです。このレベルまで行くと頻繁に売り買いすることへのリスクは大きいと言えます。

まとめ

1つ目の「源泉徴収の有無」の結論は簡単。
特定口座などの「源泉徴収あり」より、「源泉徴収なし」の方が明確に利回りが上昇します。

ただ、頻繁に売り買いすると、

 ・良い銘柄を手放して悪い銘柄を掴む
 ・ある程度管理しないと税額が想定より大きくなり売る

というリスクがあります。
管理できる方は「源泉徴収なし」で良いと思います。

2つ目の「短期保有は税金がかかるので不利か」は、結論付けにくいところです。

割安の極致、バリュー株の長期保有は比較的安定ですが、騰落の激しいグロース株で長期保有をしていると相応にリスクを負います。

一方、短期保有でも年間で5%くらいの利回りの場合は、税金を考慮するより次の良い銘柄を見つけるというのも一つかもしれません。

自分はバリュー株を好むので、どうしても「長期保有でキャピタルゲイン税を少なく」という思想が染みついていました。

個人的には、今回の検証で「利回り次第で、短期売買をしてリスク回避できる」という視点が得られたのは大きいと思っています。

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