【国徴法小話3】破産法と国税徴収法のはなし①

税理士試験(大学院以外)

今日は、娘の誕生祝い(誕生日は来週)で実家から両親が来るので片付けと準備をします。

●今日の娘

朝、妻が寝ていると、

「ママ! もう ねりすぎ(寝すぎ)だよ!」

と、起こすようになってきました。

平日は逆なんだけど、休日はコンスタントに娘が妻より早起きです。
そろそろ3歳なので色々とわかってきた感じですね。

さて、本題。
今日は、試験に出ない(マニアックな)国税徴収法の話。
たまにはこういうのを書いていきたいと思っています。

テーマは、「破産と税金の徴収」です。

破産した時の税金の徴収はどうなるのか。
課税はある程度予測がつくと思うので、未納だった税金がどう扱われるかを一旦整理します。

納付しなくていいのか、滞納処分は行われるのか。
このあたりについて国税徴収法の法令を軸に考えてみましょう。
「今日のゲストは、破産法さんです。」といったところ。

国税徴収法の範囲外のように見えて、広い意味で関係法令として範囲になると思います。(案内に、「当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。」とあるので。)

・・・まぁ、出ませんね。

整理していくと税金を各区分に分けられればそんなに特殊論点ではありませんでした。一応、滞納処分(交付要求)の応用形です。
(ただ、細部はかなり酷い沼で、2回に分けて書くことにしました。)

国税徴収法の受験生は、他法(国税通則法、破産法)とのつながりを知ることが出来るため、ティータイムがてら読んでみてもらえればと思います(特に次回の手続き関連)。

なお、破産管財人が選任される程度の財産がないケース「同時廃止」については、特にすべきことがない(しいていうなら滞納処分の停止になるんだと思います。)ので今回は触れません。

破産と税金

我々が、返せないほどの借金を抱えた場合や、法人が債務超過になった場合などに、「破産手続き」が行われます。

破産手続きが開始されると、不正な方法や悪質な手段(例えば計画倒産)により借金を抱えた場合などを除き、裁判所が「自分の資産を全て手放す」代わりに、「全ての負債(一部除く)を手放すこと」を決めます。

その後、法人は破産により法人格が消滅し、個人は一定期間信用(5~10年?)を失うことになります。
10年を長いと思うかはさておき、立ち直れないほどの損失を受けた人に対する一種のセーフティネットになっています。

では、これらの破産者の未納の税金はどうなるのか。
「破産した場合の税金」について整理していきましょう。

該当法令は、国税徴収法(+国税通則法)、破産法になります。

破産でも免除されない!? 税金の特殊性

滞納処分は可能?

破産事件が開始された後、滞納処分(差押え)をすることが出来るか。
結論としては、破産開始後は新たな滞納整理をすることができません(破産法43条1項)。

破産事件では、一旦みんなの債権の動きを止めてから(最後の)分け前を与える処理だからなんだと思います。

なお、既にした滞納整理は有効となります。(同条2項)

税金も債務から免責されるの?

「税金は破産しても免除されない。」
このあたりはなんとなく聞いたことがあると思います。

結論としては、見出しの最初にもあるとおり、税金は免責されません。
根拠法文は、国税徴収法ではなく破産法です(破産法253条)。

裁判所に免責を許可されても、税金に限らず、253条の債務は残ってしまいます。

国税も鬼ではない?

(2)で書いたとおり、税金は破産しても残ります。

ただ、滞納者といっても法人なら破産により法人格が消滅。個人なら信用ゼロで生活苦の人も少なくないわけです。
このような税金を回収しようがない対象者に、税務署は運用上はどうするか。

「滞納処分の停止」です。

これは、国税徴収法の試験範囲。根拠法文は153条1項には3つの滞納処分の停止の条件です。

ざっくり言うと、

 1号 財産がない
 2号 生活困窮
 3号 「財産」と「滞納者の所在」が両方とも不明

のケースです。

法人の場合

1号の無財産に該当。

破産の時点で債権<債務のため、債務を免除。

さらに、法人格がなくなるので、理屈上、これ以上の収入がないため、法人の財産が何もない状態といえるからです。

個人の場合

2号の生活困窮か、1号も無財産あたりになるのだと思います。

個人の場合も概ね同じ。

ただ、法人と異なり、破産後にもサラリーマンとして給与が出ているなどというケースもあるかと思います。こういうケースまで税務署が許してくれるかどうかは、税務署や担当者の裁量にもよると思います。

根拠法文こそありますが、あくまで税務署判断。
「国税徴収法152条1項2号該当なので処分を停止してください」と言えるものではない点で、先日語った納税の猶予関連と同じです。

以上、ここまでが考え方。

次は、国税徴収法の応用理論対策「破産時の滞納処分」です。
やたら長くなったのと、こっちは単なるニッチ過ぎる記事なので2回に分けます。法律関係を整理すると文字数が増えてしまいますしね。

絶対試験に出ないと思いますので、勉強の合間のティータイムや受験後にまめ知識として読んでもらえれば幸いです。
暗記しても点にはなりませんのであしからず。

まとめ

破産した方の未納の税金の取り扱いは以下の3点。

 1 新たな滞納処分は行われない(もともとの差押え等は有効)
 2 破産しても滞納税金はなくならない
 3 ただ、破産した事情を考慮して税務署が許してくれる場合もある

ほとんどの場合、破産したら仮に税金が免除されたとしても、きつい状況は変わりません。
いわずもがな、節税にもなりませんし積極的に破産をしたい人は居ないと思います。

本記事は、やむなく破産になったときに税金がどうなっていくかの流れを整理する機会にしてもらえればと思います。

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