翌年の所得税の対象にするために株式を売るべきタイミングは?

年末に売却しようと思っている株式があるとき、株式譲渡に係る所得税額を調整するために売却のタイミングを調整することがあります。

例えば、

①株式の損失を利益に相殺して税額を減らす。
②株式の利益を翌年売却して税額を翌年に繰り延べる。

などが想定されます。

所得税法上の株式の譲渡損益は、
「譲渡収入ー取得費」で算定します。(所得税法33条、38条)

つまり株式売買の所得については、譲渡をのタイミングで算出できます。
(当然ながら、実際は1年間の譲渡損益を集計して確定申告します。)

では、「年末をまたぐ取引をした場合にどの時点を譲渡の時点するべきか」を整理する必要があります。

年末にふと気づき、課税のタイミングを確認するため、調べてみました。

※当該記事は、証券会社・国税局のHPなどを確認をしながら作成していますが、
 実際に年末の境目に取引をする際は自己の責任でご利用ください。

譲渡のタイミングと課税

株式の譲渡が確定した日には2つの捉え方があります。

・システム上譲渡した「約定日」
・株式を相手に渡した「引渡日」

の2つです。

所得税法上、租税特別措置法基本通達により、「引渡日」を収入の日としています。
(SBI証券の解説を見る限り「約定日」となりうるケースもあるようですが、発見できませんでした。)

なお、法人税法の基本通達だと「約定日」を原則として、継続的に適用することを前提に「引渡日」も可能です。

実際いつを境に申告の年度がかわるか

殆どのケースは「特定口座」であるため、「受渡日」として処理されます。

① 特定口座 国内「受渡日」 現地約定日(取引日)+3営業日
(ロシア・ベトナムなどは、+4営業日)
② 一般口座 同様(現地約定日(取引日)+3営業日
③ 現地口座 (現地)「受渡日」 現地約定日+2営業日(米国株の場合)

DMM.com証券で、わかりやすく受渡日と約定日の関係(米国株)が書かれています。

DMM.com証券(米国株の場合の約定日と受渡日の関係)

約定日(特に現地)だと、どのタイミングを譲渡の時とするか困難ですが、「受渡し」なので管理しやすそうです。

例えば、2020年の場合(赤は日本の営業日)
    

       2020年12月
    日 月 火 水 木 金 土
              25 26
    27 28 29 30 31 1 2
    3 4 5 6 7 8 9

米国時間12月25日に取引した場合 → 4営業日目 12月30日 国内受渡日
    12月28日に取引した場合 → 4営業日目 1月4日 国内受渡日
    12月29日に取引した場合 → 4営業日目 1月5日 国内受渡日
    12月30日に取引した場合 → 4営業日目 1月6日 国内受渡日
    12月31日に取引した場合 → 4営業日目 1月6日 国内受渡日

以上により、

国内証券会社の取引の場合は、12月25日の取引したものまで
②国外の証券口座の場合(例えばFirstrade証券など)は、
 2営業日で受け渡し、31日も営業のため、12月29日まで
2020(令和2)年分の確定申告の対象になると思われます。

法的根拠(基本通達含む)

●租税特別措置法基本通達(抄)

(株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期)
37の10-1 株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期は、次の区分ごとにそれぞれに掲げるところによる。

(1) 次の(2)から(4)以外の場合
 株式等の引渡しがあった日による。ただし、納税者の選択により、当該株式等の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認める。

(2)~(4)は、信用取引等の話なので割愛

法人の場合の疑問点

所得税の場合、基本通達でわかりやすく線引きできているので、比較的判断しやすいです。
(正直、試験で勉強してたかもしれないので忘れてたことを反省。)

ただ、法人の場合原則「約定日」、例外「受渡日」とあるため、気になっていた疑義を生じます。

法人税法上の基本通達

①国外の約定日を「約定日」と捉えるか、国内の「約定日」と捉えるか
②国外の約定日の場合、日本時間で判断するか、各国時間で判断するか

通達だけでは情報不足のため、(繁忙期後に)別途税務署に確認してみようと思います。

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