税金の銀行窓口払いが有料となる日

妻の仕事がピークのようなので、今日は実家に娘と泊まりに行ってきます。
晴れていればプールなどで遊べますが、流石に今週末は厳しいですね。

今日は久々に税の話でも。
業界外なので、相変わらず身近な特殊論点で。

最近、税金の支払いで銀行の窓口手数料を取られるようになったことはあるでしょうか。

かつて、税金は銀行窓口を使うのがスタンダードで手数料も無料だったのですが、メガバンクなどを中心に、「納税者や官公庁に手数料を請求する時代」になってきました。

国内の銀行の経営状況が良くないのかもしれませんですが、落ち着いて考えると人件費や作業コストがあるため、単純に対価を今まで取らなかったことの方が不自然にも思います。

一方、銀行では有料になったものの、コンビニエンスストアなどでの納付が可能になり、銀行以外の納付方法も増えてきたようにも思います。

非公開情報が多いようで、中々ネットで見つけにくい内容でしたが、窓口などの税の納付の有料化について調べてみました。

納税の手数料は無料、というのはいよいよ時代遅れになるかもしれません。

銀行も手数料を取る時代

最近、全国の銀行で税金の納付に手数料を取るようになってきたのを見かけます。

北海道七飯町のHPより、北洋銀行及びみずほ銀行の窓口有料化の記事
検索の上の方に来ていただけで、七飯町以外の地方自治体にもあるようです。

文言通りで考えると、「年4回払いの住民税や固定資産税は年3,520円」「年12回払いの住民税特別徴収ならば年10,560円もかかる」計算となります。ややもすれば、従業員の年間の特別徴収税額を超えるかもしれません。流石に高いし、割と急進的といえます。

住んでいる自治体の近くにある地銀でも税金の納付に手数料を取るようになってきて、納税そのものも負担を大きく感じるような時代になってきました。

統一QRコードのお話

一方で、DXを目的としたものなのか、総務省指揮で納付書払いの負担を減らすための工夫を行われています。

令和5年度から、地方税の一部の税目(住民税、固定資産税、軽自動車税の普通徴収や国民健康保険「税」など。)で、納付書に全国統一のQRコードをつけることで地方税の納付が便利になります。 参考サイト

概要としては次の通りです。

①どんなシステムなのか

全国で統一規格のQRコードを使用し、納付方法やシステムを統一することにより効率化を目指すシステムのようです。

②対象科目(税目)

対象となっている税目は、「(地方)税」です。
ただ、全ての税目ではないようで住民税の特別徴収(退職にかかる住民税を含む)、法人住民税、法人事業税、(軽)自動車税の環境性能割(旧取得税)、事業所税は対象外となるようです。

一方で、QRコード非対応の税目は、地方税共通納税システム(eLTAX)のダイレクト納付に対応しているようで、すみ分けをしているように思います。

残念なのは、「国民健康保険税」は統一QRコードの利用対象なのに、「国民健康保険料」は利用対象外となるようです。国保、後期高齢者医療、介護保険制度の無い自治体はないので、法の手当てで統一QRの対象にすればよかったのでは?と思います。

③対象となる納付方法

 ・窓口納付
 ・クレジットカード納付
 ・ペイジー納付
 ・スマホ納付(いわゆるPayPayなど)

で利用できるようです。

したがって、クレジットカード納付などは対応していなかった納付書もQRコードの印字により使えるようになるのではないかと思います。

他の納付方法では、

 ・「口座振替」
 ・上述のとおり特別徴収や法人住民税の「ダイレクト納付」
 ・「コンビニ納付」

は対象外のようです。

④手数料
今日の本題である肝心の手数料ですが、詳細はあまり掲載されていません。
まだ決まっていないのか、当面非公開なのか不明ですが、もう少し待つ必要がありそうです。

とはいえ、窓口手続きの負担をQRにより減らすという趣旨からも、手数料は減るのではないかと思います。(QR読んでお金を回収するだけで1枚880円はちょっと・・・)

公開されているもので、ペイジー(MPN)納付は33円+税と思われる記事があります。
地方税共同機構、QRコード手数料「1件33円」提示 ニッキン

あまり身近な納付方法ではないですが、銀行窓口利用の880円よりはるかに安いことは間違いありません。

クレジットカード納付も、手に入れた資料(※)によると現時点で対応している国や自治体の資料を見る限り、1万円単位くらいで従量制になっているのではないかと思います。

これら統一QRコードは来年4月から導入のため、そろそろ主体の総務省や地方税共同機構、各自治体から具体的な情報が出てくると思うのでもう少し待ってみたいところです。

※月刊地方税(一般財団法人地方財務協会)2022年4月号の「地方税の収納・徴収対策等に係る調査結果(概要)」

官公庁も手数料を支払っている

次に、金融機関が我々から手数料を取るようになったのに加えて、納付方法により国や自治体からも手数料を取っているようです。(これも考えてみれば当たり前かも。)

恐らく、我々が手数料を支払わない納付方法は、国や自治体が手数料を支払っていると認識する方が自然と言えるでしょう。

国や自治体の手数料はほぼ非公開ですが、官公庁の決算書などを見ると時々(又は決算額から単価を推測)情報を拾えるものがあります。

また、公開情報として掲載されている資料もあります。
上述の月刊地方税(一般財団法人地方財務協会)2022年4月号の「地方税の収納・徴収対策等に係る調査結果(概要)」に、「コンビニエンスストア」の自治体手数料の分布や平均値の資料があります。これによると、

 都道府県 平均61.44円
 市区町村 平均63.02円

となっています。(税抜きか税込みかの記載が見つからなかった。)
やはり、無料ではないわけですね。

スマホ納付についても、

 都道府県 平均61.32円
 市区町村 平均62.82円

となっていて概ねコンビニと同じようです。
数十万件~数千万件の税や国保の納付を扱う自治体にとって中々の支出になっているようですね。

口座振替、ペイジーについては、平均値ではないですが、大分県監査委員作成の「令和元年度行政監査結果報告書」P10の一覧表が参考になります(監査の資料のため公式資料といえます)。

それによると、

 窓口収納 1件10円+税
 口座振替 1件10円+税(ゆうちょのみ10円)
 コンビニ・スマホ 1件55.6円+税
 クレジットカード 0円(利用者負担)
 OSS(ペイジー?) (月7万円+1件7円)+税
 地方税共通納税システム(恐らくダイレクト納付)33円+税

のようです。

このような一覧表が他になかったため、年度や国・他の団体で状況は異なると思いますが、ある程度参考になる資料といえます。窓口収納は、納税者分が最近有料化されたので、もしかすると自治体負担も変更されているかもしれません。

では、どうするか

さて、これらの資料を整理して、我々がどう動くのが合理的(安く済む)か考えてみましょう。

次の表にまとめました(情報が少ないですが)。
窓口有料化について考えるテーマのため、敢えて金融機関の窓口手数料を880円(税抜き800円)としています。

納付方法が税目で大分異なるので、QR対応(住民税、固定資産税、自動車税(軽自動車税))グループと、QR非対応(住民税特別徴収、法人住民税・事業税)グループで分けました。

「納税者分」の安いものを選べば我々がトクな選択。
「合計」の安いものなら、税金の無駄遣いまで網羅した最適解といえます。

住民税、固定資産税、自動車税(軽自動車税)では、

 ・口座振替
 ・コンビニ納付
 ・スマホ納付

が有利です。

ポイントのもらい方次第で、スマホ収納コンビニ支払いが有利になりえます。
自治体負担まで考える(いわゆる「税金の無駄遣いも許せない!」と思う人)なら「口座振替」です。

次に、住民税特別徴収、法人住民税・事業税では、「クレジットカード払い」「ダイレクト納付」になります。
ただ、「▲」としたとおり、法人関連税のクレジットカード納付を認めている団体は殆どなさそう(上述月刊「地方税」2022.4の資料参照)なので、実質「ダイレクト納付」が代用手段になると思います。

地方税のダイレクト納付は、IDの登録と銀行の口座設定が煩雑で、最初に送金するまでは難しい一方で、登録まで終われば毎月同じ方法で送金できるので大分楽になると思います。

国より県、県より市町村、小さい団体が割を食う仕組み

そろそろまとめに入りましょう。
銀行も、ゼロ金利時代が続き、利益を出すために納税者や官公庁から手数料取ることを目指しているように思います。

今後、景気が良くなったとしても、手数料を無料に戻すとは思えないので、今後は、銀行の手数料を「自治体」か「納税者」が支払うことになるでしょう。

また、納税者(お客さん)数千万人の国税と、人口数千人の地方自治体(特に町村)の地方税ならば、後者の方が金融機関へのコストがかかるため、地方税から有料化、高手数料になることが予想されます。

その中で、「統一QRコード」「ダイレクト納付」は、国全体で統一した制度のため、これらの地域格差を埋めるものとして重要な役割を果たすかもしれません。

つまるところ、納税コストは無料である時代は終わり、どう納付するかを納税者が判断する時代が来るのだと思います。

まとめ

最近は、税金の納付にも手数料がかかる時代になってきました。
そうなるとコストのかからない有利な納付方法を選ぶ必要があります。
今回の重要なポイントは6個

 ・納税の銀行手数料無料の時代は恐らく終わる
 ・納税者も国や自治体も、手数料を取られる
 ・特別徴収や国保など年10回以上ある科目はかなりコストが増える
 ・住民税普通徴収、固定資産税、自動車税(軽自動車税)なら口座振替又はコンビニ・スマホ納付
  住民税特別徴収、法人住民税・事業税、事業所税は、ダイレクト納付が安く済む
 ・国より地方の納税コストがまず上がると思われる

 ・一方で令和5年度に導入の統一QRコード導入で負担が減り、手数料が下がるかも?

今後、2,3年で「納税には手数料がかかる」と認識される(せざるを得ない)状況になる可能性が高いといえます。そのため、早い段階で、最安の納付方法を知っておく価値があると思います。

※R4.7.15時点のものです。
 情報が少なく、動きが激しいテーマであるため、日々変わっていく可能性が高いので、気をつけてください。

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