税金の延滞金の計算方法の話

リュウです。

 

今日は大学の友人たちと忘年会です。

年末も近づいてきて、もうひとがんばりですね。

 

税理士試験を合格した後、税理士の方のブログをよく観ることがあるのですが、税関連の記事で申告(課税)の話は多く出てくるのですが、「納税関連」の話は、あまり出てきません。(税理士を雇える人達がクライアントなので、期限内申告と期限内納付を出来ているからこそ、そもそも不要な論点なのかもしれません。)

 

今回は、納税側のニッチな話題でも書こうかなと思います。

 

税理士試験でも、私が受験した科目で「延滞金の計算方法」について触れた科目は、「住民税」「国税徴収法」くらいしかなかったかと思います。(他の税目の試験は直結せず、重要な論点が他に多くあるからかもしれません。)

 

とはいえ、時々知り合いに、「延滞税(延滞金)の計算方法」を聞かれることがあります。

 

税金でもそうですが、国民健康保険、後期高齢者医療保険、介護保険(1号被保険者)、年金などでも、ほぼ同様のルールで発生してくるものなので、フリーランスの方などで国保加入の方などは、縁がある方もいると思うので、知っておけば、納付総額がある程度予想できるため、相応に役立つ知識かと思います。

 

今回も概要を伝えられればと思います。

過去の反省から、税法に従って厳密に解説しようとすると、わかりにくいブログになってしまうので。

 

1.延滞金(延滞税)とは

2.計算方法

3.計算例

4.まとめ

 

※最寄り駅の冬の夕暮れ(2018.11)

 

1.延滞金(延滞税)とは

延滞金(延滞税)とは、「税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する」ものです。(引用:国税庁No.9205 延滞税について

 

「延滞税とは、すなわち○○です。」という定義で国税庁のホームページに載ってなかったのですが、明らかに期限内に納付しなかった方に対し、遅れた分で生じる「ペナルティ」と解釈すべきでしょう。

 

なお、国税だと「延滞税」といい、地方税、公課(国保・介護保険等)は「延滞金」といいます。

 

源泉徴収や申告時納付の制度が多い国税に対し、国保や住民税などで、どちらかというと「延滞金」という言葉のほうが耳慣れているかと思うので、「延滞金」という表記で書いていこうと思います。

 

法的根拠は、国税通則法(60条等)、地方税法(各税目により定義)とありますが、考え方は全て同じです。

 

2.計算方法

それでは本題の計算方法に入りましょう。

 

延滞金は、

 「①滞納本税 × ②一定の割合(年XX%) × ③納付までの期間」

で計算されます。

 

これはイメージどおりかと思います。

借入金も同様に「支払いが遅れた期間と金額に対し、利子がついていく」ことをイメージしてもらえればいいと思います。(借入金の利息との違いもありますので後述)

 

(1)滞納本税

「滞納本税」にあたる部分で重要は所は4点です。

 

 ①延滞金の計算の基となる税額は、「本税のみ」

 ②期別で計算する

 ③本税は1,000円未満切り捨て

 ④本税が2,000円未満の場合は増えない

 

①延滞金の計算の基となる税額は、「本税のみ」

ここが、民間の借入金との(例えば消費者金融)違いになります。

簡単にいうと、「延滞金から延滞金は発生しない」ことです。

 

民間では、利子(元本+利息)にも利子がつくため、雪だるま式とか、複利とか言われますが、借入金がが加速度的に増えていくのですが、延滞金が増える速度は本税の残額に比して等速です。

書いてあるとおり「本税を納付し終えると延滞金は増えなくなります」

 

②期別で計算する

個人事業税は年2回、固定資産税・都市計画税、住民税(普通徴収)は年4回、住民税(特別徴収)は年12回、国保、介護保険等は年10回程度(自治体による)の納付を行いますが、それぞれの期別で計算をしていきます。

 

後述の、延滞金が課されない上限を合計で超えても、各期別で超えなければゼロになります。

③本税は1,000円未満切り捨て

本税の1,000円未満の端数は切り捨てて計算します。

例えば、国民健康保険の1期(H30.6.30納期限)が16,800円でしたら、16,000円として延滞金の計算を行います。

 

④本税が2,000円未満の場合は増えない

本税が2,000円未満の場合はゼロとして、そこからの延滞金は発生しません。

 

例えば、軽自動車税(原付)H25年度分の本税1,000円を滞納した場合は、100年経っても、延滞金は発生しません。(現在は改正で本税2,000円なので、部分納付しない限り微々たるものですが発生し続けます。)

 

 

(2)一定の割合(年XX%)

延滞金の計算の割合(利息という言い方はしません。)は、原則的な割合が市場金利に比べて著しく高いためか、特例基準割合(租税特別措置法93条2項)というものを設けて、市場との整合性をとっています。

また前述の通り、納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までか、それよりあとの日かで2通りの率があります。

 

原則の率はかなり高めで、納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までは年7.3%、それより後は年14.6%です。

 

それ故に、結構細かい率になっています。

こんな複雑な率にしたせいか、国税局のホームページに一覧表が載っています。

 

定義について説明すると、かつては「公定歩合」を使ったりとか、現在は、「日銀の新規の短期貸出約定平均金利」とかを基にして計算しているのですが、住民税の受験生以外使うこともなく、(麻生)財務大臣が12月15日頃に来年の率を教えてくれるだけですし、それだけで1テーマ語れそうなので省きます。

 

重要なところは2点。

 

 ①「納期限の翌日から1ヶ月を経過する日」と、「その日より後」で割合が異なる

 ②延滞金の率は国税局のホームページに一覧表を見れば良い

 

①「納期限の翌日から1ヶ月を経過する日」と、「その日より後」で割合が異なる

未納になってから1ヶ月を経過する日までは、低い率で計算します。

 ・平成30年の場合、年1.6%です。

 

その後は高い率で計算します。

 ・平成30年の場合、年8.9%です。

 

②延滞金の率は国税局のホームページに一覧表を見れば良い

国税庁に丸投げになってしまいますが、結局国税庁に表示されているこの割合を使いますので、気にしても仕方ありません。

 

定義については、上述の通り省略します。

 

(3)納付までの期間

納付までの期間で重要な点は3点

 

 ①「1ヶ月を経過する日」はいつか

 ②分割して納付した場合は

 ③うるう年はどうするか

 

①「1ヶ月を経過する日」はいつか

法律用語の「する」と「した」の使い分けだけでも、国税徴収法の授業のブログネタにできそうなものですが、面倒なので割愛。

 

延滞金の話だけをするなら以下の例を見てもらえればかるかと思います。

 

「起算日の1ヶ月後の前日までが1ヶ月を経過する日」です。

 例1:納期限H30.7.31は、延滞金の計算の起算日はH30.8.1で、1ヶ月を経過する日はH30.8.31です。

 例2:納期限H30.9.1は、延滞金の計算の起算日はH30.9.2で、1ヶ月を経過する日はH30.10.1です。

 

この2例だけ知っておけば十分でしょう。

なお、納期限は土日に左右されますが、延滞金の計算は左右されません。

 

②分割して納付した場合は

税務官公署や保険者などが、分割での納付を認めてくれる場合があります。この場合の延滞金の計算は、「納付日の翌日から、分割納付をした額を減らしたもので計算」します。滞納残額に対して延滞金がかかるのでしっくりくると思います。

 

③うるう年はどうするか

若干マニアックな論点です。うるう年でも365日で割り返します。

したがって、延滞金は「うるう年だと1日分余分」にかかります。

 

計算上は閏日(2月29日)を1日として、最後に365日で割返すことになります。

 

(4)端数調整等

概ね計算の話は以上となりますが、最後に端数調整の話をします。

重要なのは4点。

 ①それぞれの期間の合計を足し合わせて計算する

 ②それぞれの期間で計算された1円未満は切り捨てる

 ③足し合わせた合計が1,000円未満ならゼロ

 ④足し合わせた合計の100円未満は切り捨てる

 

①それぞれの期間の合計を足し合わせて計算する

「それぞれの期間」とは、今までに説明したとおり、延滞金の割合が変わったり、分割納付などで本税の額が変わったときのことで、それぞれ個別で計算し最後に足し合わせます。(計算例を見たほうが早いので後で載せます)

 

②それぞれの期間で計算された1円未満は切り捨てる

そのままです。足し合わせる前に1円未満の端数を切り捨てます。

 

③足し合わせた合計が1,000円未満ならゼロ

税金や保険料を滞納したときに、なぜか延滞金がかからないことがあったかと思います。これは大抵の場合は延滞金が1,000円に満たなかった場合かと思われます。(延滞金がゼロだから、そこまで払わなくていいという意味ではないですよ。そんなことを徴収担当に言ってしまうと差押をされるのでやめましょう。)

 

④足し合わせた合計の100円未満は切り捨てる

そして計算の最後のお色直し。

100円未満の延滞金を切り捨てて完成です。

 

本税の納付でもわかるとおり、100円未満は切り捨てます(還付は端数まで帰ってきます。)わかりやすさと納税者有利の仕組みなのでしょう。

 

 

3.計算例

今回は、国民健康保険料を滞納し、分割納付を認めてもらった事例を考えましょう。

Excelをつかえると楽かと思います。

 

(例)Xさんは、平成30年度の国民健康保険料を納期限後、しばらく納付していませんでしたが、自宅に差押の予告が届いたことで、このままでは良くないと思い、10月15日にA市役所に納付相談に行きました。

 Xさんの事業が、収入の安定しないものである事情を説明し、12月に高額の売掛金が現金化されるので、10月末日に2万、11月末日に2万、12月28日に30年度の残額を全て納付する約束で分納を認めてもらい、その後、Aさんは約束を履行しました。

 

 本税に追加して納付する延滞金額はいくらになりますか。

 なお、分割して納付した額は、本税の古いものから順番に充てるものとします。

 

 国民健康保険料の賦課額は以下の通りです。

 

     納期限 本税

 1期 H30.7.2 41,700円

 2期 H30.7.31 41,000円

 3期 H30.8.31 41,000円

     (以下略)

 

(1)1期について

1期は、10月から2万円ずつ充てていくので、都度、延滞金を計算し直します。

本税1,000円未満の計算、納期限から1ヶ月を経過する日かそれより後かによって扱いが異なることを忘れずに計算してみましょう。

 

① 7/2〜8/1 41,700円 → 41,000円 × 2.6% × 31日/365日 = 90.53・・・90円

② 8/2〜10/31 41,700円 → 41,000円 × 8.9% × 91日/365日 = 909.75・・・909円

③ 11/1〜11/30 21,700円 → 21,000円 × 8.9% × 30日/365日 = 153.61・・・153円

④ 12/1〜12/28 1,700円 → 0円 発生せず。(本税2,000円未満)

 

①+②+③+④=1,152円 → 1,100円

 

 

(2)2期について

① 8/1〜8/31 41,000円 × 2.6% × 31日/365日 = 90.53・・・90円

② 9/1〜12/28 41,000円 × 8.9% × 119日/365日 = 1,189.67・・・1,189円

 

①+② = 1,279円 → 1,200円

 

(3)3期について

① 9/1〜9/30 41,000円 × 2.6% × 30日/365日 = 87.61・・・87円

② 10/1〜12/28 41,000円 × 8.9% × 89日/365日 = 889.75・・・889円

 

①+② = 976円<1,000円 → 0円(発生せず。延滞金1,000円未満)

 

3期がゼロなので、4期以降は省略します。

 

4.まとめ

実はこれ以外にも、いくつか論点(計算期間や延滞金の割合の特例措置として、申告後1年経過後の賦課等、特定の条件下による利子税、差押等滞納処分関連によるもの等)が有りますが、今回は、原則部分の「延滞金の計算法」に絞って解説しました。

 

重要な論点は、

 

 ・延滞金は、「①滞納本税 × ②一定の割合(年XX%) × ③納付までの期間」で計算できる

 ・税の延滞金は、利息と違い、「本税」に対ししてのみ発生し、本税の完納と共に増えることはなくなる

 ・「納期限から1ヶ月を経過する日まで」は低い割合、以後は高い割合で発生する

 ・延滞金の割合は、現在原則法によらず、特例基準割合が使われており、国税庁のホームページで確認できる

 ・延滞金は、合計1,000円未満なら発生しない

 

あとは、

 ・特例基準割合を用いても延滞金の割合は高い(H30年は年8.9%)

ことだけは、忘れてはいけないですね。

下手すれば、これだけわかれば十分な気も・・・。

 

本税5万円(目安、自動車税1台分くらいでしょうか。)を一年間放置すると、年間4,500円近い延滞金が生じることは無視できません。

 

ここだけ覚えてもらえれば、未納の時の延滞金の計算も概ね大丈夫です。

(未納の時点で、財務状況的には大丈夫じゃないかと思いますが・・・。)

 

参考になれば幸いです。

 

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