今日は、「外国株の現地証券口座で発生する税金(個人)」について整理してみたいと思います。
株式取引という点で、国内の証券口座と共通のものも多いですが、外国の所得ゆえに異なるものがいくつかあります。その違いに注目して参考にしてもらえればと思います。
税と投資関連の記事は、一応確認しながら作成していますが、情報不足な場合や、記事の時期の法令と異なる場合があるのでご容赦ください。
今回は、個人の所得税について、外国株を現地証券口座で購入した場合の申告手続きについてまとめます。
なお、法人課税については書きませんが、所得の種類が増えるわけではなく、全ての収入を益金に計上し、費用も損金として計上されるため、国内との差異は外国税額控除くらいになると思われるので、記事にするほどではないでしょう。
●もくじ
1 所得部分
2 所得控除部分
3 税額控除
【最重要】
重要なので最初に書きます。日本人で日本に住む方は、国外の所得も確定申告しなければいけません。
無視していて、海外の所得が判明すると税務署から追徴(正しい税金との差額の納付)と加算税(ペナルティ)が課されますので、必ず義務が生じる方は申告するようにしてください。
外国の所得は、ある程度の和訳と、日本円換算が必要になるので若干手続きが煩雑になります。
(この辺りをもう少し簡素化できるツールを作れば提供したいところです。)
1 所得
さて、まずは所得部分。
申告で関係してくる部分は、①利子所得、②配当所得、③譲渡所得(株式等)です。
それぞれ国内と国外で取得できるものの特徴を解説していきましょう。
①利子所得
ベトナムの現地口座だと、口座にあるお金に対して利子が発生します。(年0.5%程度、昔は2%くらいでした。口座に入れっぱなしの残高に対し利子が生じます。日本より金利は高めです)。
利子所得は、原則的に日本国内だと源泉分離課税(例として、銀行が利子から20.315%を強制的に天引きする仕組み)がありますが、「海外の口座なので、日本の法律の源泉徴収の対象にならない」のです。
(国内の場合は、参考ページ(国税庁):No.2230 源泉分離課税制度)
そこで、総合所得として「利子所得」を申告します。
なお、源泉徴収されない個人の貸付金の利子は「雑所得」なので、結構レアな所得になります。申告する時、書面を見る人が疑問に思う人に説明するとちょっと優越感に浸れるかもしれませんね。
教科書的に書くと、「利子は、収入額から控除できる金額はない」ので円換算した額そのままを申告します。
②配当所得
配当所得での特徴は、「総合所得」しか選択できません。そして、「配当控除」の適用がありません。
ここが一番の特徴かと思います。
上述のとおり、「海外の口座なので、日本の法律の源泉徴収の対象にならない」ので、申告不要にも、申告分離課税(により譲渡損と相殺)にもできません。
したがって、総合課税の税率が高いと結構税額が大きくなります。
ここが「海外現地口座の一番の弱点」だと思います。
とはいえ、これを差し引いても手数料面は大幅に下がること、譲渡所得は同じ課税方式であることから、現地口座の方が有利であると思われます。
収入から控除できる控除負債利子は、国内と変わらないので説明は省略します。
参考:No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度(国税庁)
③譲渡所得(株式等)
譲渡所得は、特記すべきことはないですが、日本と同様にキャピタルゲインを(上場株式等に係る)譲渡所得として計上します。
上場株式等の意義につき国税庁が列挙しています。
取引しないと分かりづらいかと思いますが、UPCOM(未上場公開企業市場:ハノイ証券取引所内)も、「6 外国金融商品市場において売買されている株式等」に該当するため、上場株式として申告します。
(なおUpCOM銘柄は、日本では取引できませんが、小粒で優良な銘柄が多いので、リスクをしっかりとれば個人投資家でもそこそこの規模の投資が可能です。)
④その他
口座維持費が、(株式等の譲渡による)事業所得、雑所得ならば、必要経費として計上する余地があるかもしれません。とはいえ、株式譲渡で事業所得、雑所得を計上する事例をほとんど聞いたことがないので、原則的には影響はと思います。
2 所得控除部分
所得控除は、日本国内の証券口座とあまり変更点がありません。
(外国株の)所得じゃないので当たり前ですね。
3 税額控除
外国税額控除については前に記事(外国税額控除部分の申告書の書き方)にしましたが、支払った外国税額(ベトナムの場合は、譲渡収入の1%、配当所得の5%)の全部又は一部を控除できます。
10%くらい源泉徴収されると、全額控除できない場合がありますが、ベトナムの5%程度なら支払った額の全額を控除できます。
詳細については上記を参考にしてください。
●まとめ
以上により、外国の現地口座利用にかかる税金と日本の株式取引に係る税金の違いに着目して説明してきました。
それほどの差はないかと思いますが、若干配当課税で不利ですね。それ以外は手間が違うといったところでしょうか。
最近では海外取引に関する知識も大分要求されるようになって来ましたが、税理士さんも、外国税額控除を主として、そこまで多数の件数を取り扱える案件ではないので知っておくと役立ちます。(ある研究の資料を見る限り、高額所得者でも数%くらいしか外国税額控除の適用を受けていません。)
「この人、知っているな。」と思われるので、是非整理しておきましょう。
最後に、最重要なのでもういちど。
日本人で日本に住む方は、国外の所得も確定申告しなければいけません。
無視していて、海外の所得が判明すると税務署から追徴(正しい税金との差額の納付)と加算税(ペナルティ)が課されます。
申告納税は国税(連動して県・市町村)との信頼で成り立っているので、一度疑われると一生ついてまわることになります。
どうせバレないとか思わず、襟を正して申告をしてください。
では!
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