ゆとりある老後生活費に35万円も必要か(統計情報と生活費の実態との違いの考察)

ファイナンシャル・プランニング

リュウです。

今週は、まず異動。
古巣に戻り、色々変わったシステムやしきたりに慣れるための一週間でした。

そして、水曜日に大阪から出張してきた東亜大学大学院の友人+1名で飲んできました。
2人とも税法は終わっていますが、会計科目を受験中なのでそんな話もしながら、久々に近況を語り合いました。

そして、今日は夕方は妻が出かけるため、娘と2人でのんびり過ごすことになります。

最近は言葉も話すようになり、コミュニケーションが取れるので楽しいです。

今日は、ファイナンシャルプランニング的なテーマ、「ゆとりある老後生活費」について。

いくつかのサイトを見ていると「夫婦でゆとりある生活をするために必要な老後財産は月額35万円」という記事がありました。
 

相当資産がある方ではない限り、月35万円も支出する生活は不可能です。
本当に必要な生活費がどの程度かと、そのために必要な貯蓄はどの程度かを一度見直してみようと思いました。

※本当にそんな額の生活費は必要なのか?

「ゆとりある老後生活費」という言葉について


FP2級を取ってから、いくつかのFPさんのセミナーやブログを見るようになりました。
ブログを見ていると、生活設計のテーマの中で、「夫婦2名なら、老後にゆとりある生活をするために月35万円必要」と書いてある記事が時々出てきます。

・・・・月35万円って、かなり高くないか?

と思い、調べてみることにしました。

ちょっと考えてみれば、35万円×12=420万円の手取りが必要です。
そもそも、私の給与手取りでは全然足りません。

これでも正職員で12年間、入社時からある程度昇給したのですが、「ゆとりある老後生活費」に手が届かないわけです。

本当に、そんなレベルの資金、必要でしょうか。

数値の出所と、必要性について考察していきましょう。

生活費はどの程度必要か(統計上に現れる35万円の正体)


(1)統計の出所
まずは、「ゆとりある老後生活費」の正体を調べてみました。

生命保険文化センターの統計資料、調査結果一覧-1(Excelファイル)平成25年度「生活保障に関する調査」(平成25年12月発行)の第Ⅲ章 老後保障が、「ゆとりある老後生活費」がその根拠と思われます。

(※今は平成28年度のが最新ですが、35万という金額から25年度調査と思われます。)

(2)支出の内訳がない集計
「ゆとりある老後生活費」
のExcelファイルを見てもらうとわかりますが、

 ・横軸が「ゆとりある老後生活費」として必要な額の回答
・縦軸が年齢ごと、職種ごと、共働きか否か、年収などの区分でそれぞれ分類

となっています。
質問の仕方が、「最低生活費」「加算していくら必要」という形で「ゆとりある老後生活費」を計算しています。(※質問票(P7-P8)

要は、「ゆとりある老後生活費でいくらかかるか」ではなく、「いくら欲しいか」という質問趣旨であることに留意する必要があり、それぞれの回答者は「何にいくらかかるかの具体額の記載はない」ため、若干参考になりづらい指標です。

実際に老後にかかった費用ではないので、

「ゆとりある老後生活か~、100万くらいあれば余裕かな」

という回答も成立しうる(というか、明細がない以上、そういう計算が多いような気がする。)ということです。

実際に、「50万円以上」と回答する人(全体14.5%)が、「45~50万円」(全体3.1%)と回答する人の4倍以上います。
そりゃ月50万円以上支出できれば、「ゆとりも何も豪遊できるでしょ」と個人的には思う次第です。

これが平均として積み重なった結果、「ゆとりある老後生活費」が35.4(万円)という数値となって現れます。

このアンケートを批判する気はないですが、この数値が一人歩きして、一部のFPさんが、「老後には35万円もかかるんですよ。」とか、それを基礎として計算して、「老後生活費に5000万円必要ですよ」という懸念が有ります。

なお、同ページに「老後の最低日常生活費」というものがあり、この方が参考になるかと思います。
こちらの調査は、同様の形態ですが「最低」日常生活費としているため、回答者も若干慎重に計算しているためか月22.0万円という数値が出ているようです。

3ヶ月だけでいいので、家計簿をつけてみよう

では、個々人の老後生活費をどのように見積もっていくべきでしょうか。
個人的には、統計なんかより「自分の生活費から割り出す」のが無難かと思います。

家計簿があれば、概ね老後の費用を予想できる


「ゆとりある老後生活費」
は、「現在の生活費から求められる」と考えます。
なぜならば、「老後」であっても自分の生活費の延長線ですので、そこから不要な経費と必要な経費を加減算すれば良いわけです。

まずは資料集めです。

自分の生活費の家計簿を、「3ヶ月だけつけてみる(無理なら1ヶ月)」と良いと思います。
そこまで細かい区分は(あればあったで分析出来ますが)なくても大丈夫です。

3か月分も資料があれば十分かと思っています。

(1ヶ月だと節約すると誤差が出て、1年やると飽きていい加減な資料になる可能性があるため。)
面倒なら、そこ以降はつけなくても良いと思います(もちろん続ければより安全に支出を管理できます。)

生活状況に変化がなければ(子が生まれたりすると変わります。)、概ね、あなたの(サラリーマン時代の)生活費がわかります。

老後生活費の概算

次に老後生活費について。
老後になっても、退職までの生活を維持管理できていれば、そこまでコスト高になることは本来ありません。

以下のとおり、その生活費から、仕事をしていく上でかかる費用(転じて退職したらかからない費用)を引いて、
高齢ゆえにまた、退職後なので時間があるゆえにかかる費用を足せばいいわけです。

補正が必要なものとして、以下のものを考慮すれば足りるかなと思っています。

①(-)仕事をするためにかかるコスト(外食費、交際費など)が発生しなくなる。
②(+)医療費(+介護費)が発生しやすくなる
③(+)趣味(時間が出来るため)や個性のためにかかる費用を加算

医療費は、中々予想が難しいのですが、医療費+介護費で「月57,600円」を目安に未使用分を貯蓄していくといいのかなと思います。

「月57,600円の定義」は、公的健康保険の高額療養費の限度額です。

70歳以上一般世帯(所得区分により増減。(条件(厚生労働省))の公的健康保険の限度額月57,600円のため。
(毎月入院しているわけではないので、余った分は、介護費、入院時の食事療養費等のため貯蓄しておくこと。)

※医療費について調べてみましたが、たくさんかかるというイメージ先行で、実費で統計を取っているものが、少なくとも今週探した感じだと見つかりませんでした。医療費の自己負担について資料はいくつかあったのですが、参考になる数値ではなかったため。深入りして書くと、マニア向け要素が強くなるので、略。

我が家の事例


我が家の生活費は、夫婦+子1人(およそ2歳児)で支出は月24万円程度です(共働きのせいでコスト高です)。
※【重要】租税公課の保育料、住民税(普通徴収分)などは世帯構成や納税方法によるもののため比較材料として除きます。

■内訳(平均、千円未満切捨)■
 家賃   70,000円
 光熱水費 12,000円(電気5,000円、ガス5,000円、水2,000円/月)
 食費   40,000円(外食費含む。仕事中の食費はその他に。)
 子育て関連20,000円
 ★保険料  15,000円(7,500円×2名)
 ★通信費  10,000円(5,000円×2名)
 ★その他  70,000円(35,000円×2名)

 ( 交際費、職場での食費、美容服飾費、私が個人で取っている新聞代等)
合 計  237,000円   

(なお、★は共通財布に入れず、個別で管理するので浪費・節約は自己責任なので目安です。)

おそらく、その他が「お小遣い」になるのかと思います。
共通財布に入れるお金以外は自由なので、妻分は自己管理しているので不明ですが、
私の場合は、残額は貯蓄(→投資)になって行きます。

なお、蛇足ですが、現状で収入が下がった時、どこを削るかを検討すると、どうしても削るなら、「その他」をどんどん削っていくことになります。

次に、共働きでなければ「食費(特に外食費)」、最後に「保険料」、それでも無理なら「家賃」を減らすために引っ越しの順序といったところかと。なお、共働きのまま(共働きをやめると収入が下がるから逆効果)で、ストレスを少なめの節約で17万円台くらいまでは減らせそうです。

横道にそれましたが、「老後生活費」を見積もってみましょう。

積み上げた生活費から補正して予想します。
 

 家賃   70,000円
 (個人的に借家を選択。持ち家の場合はその維持費を考慮すること)
 光熱水費 14,000円

 (電気7,000円に変更。自宅滞在時間増のため)
 食費   30,000円(家で作るから安くなる。)
 子育て関連   0円
 保険料     0円

 (老後は貯蓄と公的年金と公的健康保険で対応可能※)
 通信費  10,000円(ここはもう少し減らせるかも)
 医療費  58,000円(使わない月は、口座を分けて貯蓄。)
 その他   40,000円(仕事でかかる費用は減る、趣味費は別建て)
 ★趣味等 60,000円(ゆとりある老後生活費のため。)
合 計  282,000円

所得も、サラリーマン時代と比べて大幅に減っていると思うので、租税公課を足したところで30万円程度といったところでしょうか。

「ゆとりがない」生活費とするなら、「★趣味等」を削って23万円程度(22.2万円)になります。
結果的にではありますが、上述調査の「最低生活費(22.0万円)」の方に寄っていきましたね。

世帯ごとの個人差はあると思いますが、この程度で十分かと。

なお、※のとおり、生命保険(特に死亡保険と高齢になってから更新する定期生命保険の契約系統)にはお金をかけない予定です。
年を取ると30代で月2,000円だったものが、平気で月2万円などになります(特に平均寿命(余命)が短い男性)。
どうしても気になる方でも、その月額2万円の保険料を、自分で積み立て貯蓄(+運用)をしたほうがトクです。

生命保険は、「(死亡率が低い)若い時期に万一の時にお金が出るように保険をかけるべきもの」ので、「死亡率が上がってくる高齢になるまでに貯蓄を終えて、高齢時にはコストパフフォーマンスが大分悪くなる」ものだからです。

まとめ


「ゆとりある老後生活費」
という抽象的な言葉についつい踊らされて(時にはセールストークとして故意に)、貯蓄性の高い(かつ利回りの低い)保険などを勧める業者さんを見かけることが有ります。

「生活費は、自分の生活から割り出すもの」です。

自分の生活は自分が一番把握可能なものですので。
 

今回の数値の根拠となった、高所得も低所得もごちゃ混ぜになった統計から割り出すと、「60歳までに1億円の貯蓄が必要ではないか。」などと勘違いしてしまうことがあります。

必要な費用はいくらくらいか、短期間の家計簿をつけるだけで割り出すことが出来るので、試してみるとよいと思います。

結論は3点。

①ゆとりある老後生活費に35万も要らない
②自分の生活費と老後の必要生活費は、3ヶ月家計簿をつけるとある程度分析可能
③老年期に(高い保険料の)生命保険に頼らない程度の貯蓄は必要

「支出を把握するのに家計簿をつける」・・・・というありきたりな結論になってしまいました。ですが、単純だからこそ老後生活費の見積方法に間違いはないと思います。

老後生活費は、専門家に頼るのは仕方ないとしても、自分でどれくらいの支出をしているかを把握していることは最低限できるようになる必要があります。
これを他人任せにすると、時にあなたのお金を危険にさらすことになります。

このブログでは、FP的要素も記事にしているので、計算方法について(自力で計算できるように)解説できればと思っています。

具体的には、老後必要な資金(60歳までに準備すべき金額)はいくらか(あとは、その積み立て方法)です。

今後、テーマを別にしてじっくり考えてみたいと思います。

※2020.5.8 レイアウトを若干修正

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コメント

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