がん保険は有利な保険?具体的数値で検討。

ファイナンシャル・プランニング

徐々に仕事を辞める可能性が大きくなってきたので、職場の生命保険(団体)から別のものを検討する必要が出てきました。

そんなことを考えていた矢先、テレビで「がん保険に入っててよかった」と著名人が語るCMをやっていて、

「がん保険って、本当にトクなのか・・・?」と思い、実際にを検討してみました。
結論から言うと、「あまり思わしくない」です。

保険は、リスクが低い時に不運にも罹ったときの問題を解決するために契約するものです。
したがって、「安い期間に入り、その期間で貯蓄を増やしていって、年を取ったら保険を辞める」のがセオリー。死ぬまで入っていても、高い保険料を取られるだけでメリットはありません。

今日は「がん保険」について、コストとリターンを具体的な数字に基づき検討していきましょう。

この記事は、保険サイトでありがちな「保険はトクです、アフィリエイトリンクを踏んでください」という内容ではありません。自分が保険に入るべきか検討する記事です。

保険って何のために入るの?

「保険は、多数の者が保険料を出し合い、保険事故が発生したときには、生じた損害を埋め合わせるため、保険金を給付する制度」です。(Wikipedia:「保険」)
相互扶助の概念ですね。

あなたは、保険というキーワードについてどういうイメージを持っていますか。

これは、「保険」に対するイメージ戦略的な部分。保険会社はこれにかなり気を使っていて、テレビ等マスメディアでのCMをたくさん流して「いざというときのお守り」のような良いイメージを持っている人も多いと思います。

しかし、実際はもっとシンプルなもので、

「保険事故になったらお金を貰えて、
 保険事故にならなかったら、お金を貰えない契約」

です。
保険事故とは、がん保険ならがんになって保険金給付がもらえる状態です。

(満期等は考慮せず掛け捨ての場合です。とはいえ、低金利時代には満期契約のほうが基本不利なので、今回は検討しませんでした。)

これって、

「ギャンブル」と似た性質を持ちます。
絶対に保険会社の人(特に経営者)が、ほぼ間違いなく口にしない大事なキーワードですが・・・。

つまり、積み立てによる満期や租税上のメリットを除去すると、

「保険事故に遭うことが見込まれる場合は加入するほうに契約」すべきであり、
「保険事故に遭うことがないならば、加入しないほうが経済的メリットは大きい」という内容の、「保険会社との賭け(ギャンブル)」なわけです。「お守り」とは程遠い話になります。

税制面でいうと、「法人」には比較的保険に対する支出を経費化しやすく、メリットのあるものもありますが、「個人」では生命保険料控除などの微々たる所得控除のメリット(保険金が内容により非課税又は一時所得になるメリットもありますが、あくまで給付された場合)しかなく、不利な案件が多いように思います。

次に、実際にもらえる給付の価値はどの程度か検討してみましょう。

結局いくら払い、いくらもらえるのか

前項のとおり、保険は、

「保険事故になったらお金を貰えて、
 保険事故にならなかったら、お金を貰えない契約」

です。

今回は「がん保険」で比較。
この記事を書くきっかけになったのが、ある会社のがん保険のCMなので「がん保険」ですが、生命保険などでも検討してみてもいいと思います。

まずは、「価格.com」で、期間10年のがん保険をモデルケースとしてみましょう。
(死亡まで面倒見てくれる終身保険では、高齢になる部分も考慮して保険料が高めでなので、
 比較的保険会社が不利(=個人が有利)な定期保険を検討材料にします。)

30~70歳で10年定期で見てくれるがん保険が「アクサダイレクトのがん定期」しかありませんでした。(この時点で個人が不利に思える契約が多く、若干保険会社に不信感を抱きつつあるが、継続して検討。)

契約概要

アクサダイレクトのがん定期(主たるもの、2020年11月15日現在)
 ①診断 MAX100万(1回)
 ②入院1日あたり10,000円
 ③退院 100,000円

先進医療やその他のがんなどの給付がありますが、保険対象外の診療などかなりのレアなので、貰えそうなものは上の3つがほとんどでしょう。

保険料

どんなに給付が大きくても、保険料が高ければ自分で貯蓄したほうが得です(重要)。
保険料はどんなもんなんでしょうか。

 30歳 月920円  → 110,400円 920円×12月×10年
 40歳 月1,350円 → 162,000円 1,350円×12月×10年
 50歳 月2,390円 → 286,800円 2,390円×12月×10年

30歳~60歳の累計 559,200円

(参考)60歳 月4,580円 → 549,600円 4,580円×12月×10年
※60代になると保険料が急上昇し、ものすごく不利になります。
 60歳までにがんに対する積み立てを終えておかないと高い保険料を払うことになります。
 終身保険は、このような不利な契約期間を含めて平準化することを留意しておきましょう。

保険事故が発生する確率

「当たらなければどうということはない。」(機動戦士ガンダムのシャア少佐の言葉)

保険は実際に損害を受けないともらえません。
ざっくりいうと、「保険金がもらえる確率」が大切です。

以下のサイトを参考にしました。
「2人に1人はガンになる」という通説の誤解(東洋経済)

30歳から30年、60歳までにがんに罹患する確率は7%とのこと。
確かに、身内で60歳までにがんにかかった人は15人に1人くらいと考えると妥当かもしれません。

給付額を検討

最後にもらえる給付額を検討します。

 ①診断 MAX100万(1回)
 ②入院1日あたり10,000円
 ③退院 100,000円

以下のサイトを参考に、入院日数の平均は23.9日→24日で算定してみます。

がんのための入院日数は短期化している「楽天保険の総合窓口」

1,000,000円+10,000円×24日+100,000円=1,340,000円

したがって、初回にがんに罹患すると最大で1,340,000円もらえます。

なお、がんに罹患したうえでの診断なら健康保険の対象になると思われるので、10万円程度で収まると思います。ゆえに下手すると(高額療養費の区分が57,600円と仮定して)40万円くらいしかもらえないかもしれません。

有利判定では一応診断費用も最大額(合計134万円)もらえるとして計算していきましょう。

有利判定

では、これらに基づき最後に有利判定。

前澤じゃんけんと同じく、「期待値」を使いましょう。
「期待値」は統計学の基礎部分ですが、こういう時にとても役立つ計算式です。

もらえる金額×もらえる確率の集計が、あなたが支払う保険料に見合うかが重要です。

期待値(要は貰える見込み)

保険金×確率です。

1,340,000円×7%(もらえる)+0円×93%(もらえない)=93,800円

支出額

559,200円

有利判定

①-② = ▲465,400円

以上により、【がん保険単体で期待値を求めると、30年で概算465,400円損している】という計算になります。

実際にはこれに加えて、レアケースな給付(先進医療や特殊ながんで受ける給付)を加算し、給付額が満額に至らないケースを減算する必要がありますが、概ね不利そうです。

若いころにがんに罹患すればプラスになることもあるため、全くの無駄とは言いませんが「かなり不利な契約」であることに留意しましょう。

まとめ

保険に入るときに有利不利判定をするときのポイント

 ①その保険ではどういう給付があるか
 ②保険期間で給付を受けられる確率はどの程度か
 ③給付額に対し支出総額はどの程度か
 ④還付金(保険で使わなかった部分を翌年戻す制度)がある場合は支出から控除

この4点に着目しましょう。

私の職場に保険のセールスレディが来ます。
また、家のそばのホームセンターには保険相談をするFPさんなどのお店があります。

あまり悪くは書きたくないですが、彼女らは「クライアントの損得より、契約を取ること」を優先しているように思います。彼女らは保険を契約することによりお金を貰っているため、契約を少なくすると実入りが悪くなるわけですから。

そのため、実際にメリットがある保険かを彼女らに聞いても仕方ないのかもしれません。
自分である程度計算してみるしかないのです。

最初に書きましたが、

「保険はギャンブルに似る」

これを意識するだけで、CMやセールスレディに対する見方が変わると思います。
すべての保険が悪いわけではありませんが(特に法人用)、個人の保険を選ぶときなどは一度自力で概算するのも良いと思います。

最後まで書いてみて思った結論。
思ったよりがん保険の実入りが悪かったので、私なら入りません。

●今日の娘

今日は、娘と公園にでも行こうかと。
段々コロナの感染者数が増えてきていて不安要素も多いので、広めの空間に行こうと思います。

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