「若いうちにお金を使え」に感じる違和感

ファイナンシャル・プランニング

「若いうちにお金を使え」

時々、このようなセリフをTwitterのコメントで見かけることがあります。
こういうセリフに半分共感すると同時に、半分の疑問を抱きます。

これは、若いうちの収入にも個人差が大きくあり、個々のキャッシュフローに感じたため、
今日は、ある程度基準を考えてみたいと思います。

賛否はあると思いますが、「若いうちにお金を使うべき」は若い人の多くには現実的ではない話で、上場企業や専門職に入れるような優秀な方に限られるのではないかと思われます。

正直、多くの若者のキャッシュフローはそんなに良くない

年収200万には無理がある「お金を使え」という言葉

「若いうちにお金を使え」

という言葉を伝えたい人の気持ちとしては、

 若いうちのお金は年を取ったときの同額より価値が高い。
 (年を取ったら収入が上がるから相対的に価値が下がる。)
 だから、若いうちに様々な経験にお金を使い、自分に厚みをつけるべきだ。

というメッセージが込められているように思います。
この言葉は好きな言葉である一方で、言い知れぬ違和感も受けていました。

何となく、発言者の他のツイートなどを見ていて気付きました。

「この人たち実は、本業の収入も結構あるんじゃないだろうか。」

と、思えたわけです。

プロフィールから見ると、上場企業勤務、医業、独立士業、青年実業家・・・、
地位と生活感からも年収1000万円超えと思しき人が多い。

彼らの地位、経験、収入を羨ましいと思うかどうかは一旦置いといて、

「彼らの意見に合わせる生活スタイルは現実的に無理」と思う人も多いのではないでしょうか。

社会人になって数年の多くの人は、生活費を差し引き、どうにか老後積み立てをした後に手元に残るお金は僅かだと思います。

かくいう私もサラリーマン、特段高い地位にあるわけではありません。
就職氷河期末期の頃の採用で、並の学歴や能力では高給取りになるのは難しい世代でした。
正職採用の同世代の年収で平均よりやや低めくらい。

30歳の頃は資料が手元に残ってないですが年収300万円台前半。
それでも、実家暮らし(月4万円渡していました。)だったので幸せな部類に入ると思います。(前の記事に書いた通り、自己投資に結構使っていましたので。)

とはいえ、一人暮らしをしようものなら、当時の年収だと「お金を使うにはきつい状況」でした。当然、非常勤や見習いなど、年収100~200万円台の人はもっと苦労し、余力がない状況と思われます。

若いうちは「お金を使う」ことも大切。

ただ、彼らもそうかと思いますが、「まず、貯蓄ができているうえで、使っている」のではないかと思われます。

バビロンの大富豪の話

有名な本ですが「バビロンの大富豪」という話があります。

ある貧しい青年がバビロンの石板の知恵に基づいて財を築いていく話です。
手元に本がないのですがポイントはシンプル。

 ・収入が入ったら7:2:1に分ける
 ・2を借金の返済に、1を貯蓄に、残りの7で生活する
 ・1を貯蓄に回し、運用する

といった内容だったと思います。
現在は、社会保障などの関係で手取りと収入が違いますが、「手取り」でやると良いと思われます。

したがって、手取りが20万円なら、

 ・借金の返済 4万円
 ・貯蓄    2万円
 ・生活費  14万円

15万円なら、

 ・借金の返済  3万円
 ・貯蓄   1.5万円
 ・生活費 10.5万円

となります。

さて、手取り15万円の人の生活費は、10.5万円。

居住地域によりますが、家賃、食費、光熱費だけでもかなり厳しい。
都心では恐らく不可能に近いでしょう。

とはいえ、給与を急激にあげるのは難しいため、生活レベルを合わせることで対応。
着実に将来の貯蓄と、借入金の弁済を行うことになります。

20代後半の現実的な収入状況から

実際に、20代後半の収入でこのようなことが可能なのかを検討。

孫引きですが、以下のサイトが参考になると思います。
(元資料は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」)

通常、社会人として働き始めた頃の20代後半の給与分布の中央値(トップから約50%)が、~239万円辺りになるようです。

年収240万円の方の手取り額はいくらか、目安として収入の約85%とします。

2,400,000円 × 85% = 2,040,000円

賞与を年間3カ月として15月で割り返すと、

2,040,000円 ÷ 15月 = 136,000円

12で割り返しても

2,040,000円 ÷ 12月 = 170,000円

となります。

ここからも、多くの20代後半の人が「使う」のは、現実的ではないと思われます。

現実的に、相応に給与の高い企業に勤めることができない限り、「若いうちにお金を使う」余裕なんてないのかもしれません。

まとめ

以上からわかる通り、「社会人になった直後の収入はかなり少ない」です。
そのため、「お金を使う」には限度があると思われます。

バビロンの大富豪の話からも分かる通り、重要なのは「使う」金額ありきではなく、「使える」金額から考えること。

大きくなってしまった経常経費(生活レベル)を下げるのは難しいもので、「使う」ありきだと豊かになるのは困難だと思われます。生活レベルは「身の丈に合ったもの」にして収支をコントロールできるようになったら「使え」ばよいのです。

まとめとして、大切なのは3点

 ①社会人となった多くの若者が、生活費以外でお金を「使う」余力はあまりない
 ②お金をいくら「使う」ではなく、いくら「使える」金額かで計算する
 ③給与が出たらお金を仕分けてその金額で生活する
 参考として7(生活費):2(借金の返済):1(貯蓄)で分ける

です。

個人的には、社会人になったらまず、「お金(収支)をコントロールする力」を身に着けることが大切だと思います。使うのはそれからで良い。

何もケチになれとは言いませんが、収入から支出を決める習慣を若いうちに身に着けるだけでお金に苦労しづらくなると思うのです。

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